30. 領主様のお邸
「しまった、俺ら宿とってないぞ。」
「あぁ、宿のこと忘れてたな・・・。」
「じゃあみんなで木の上に登って寝ればいいんじゃない?」
「シュペア、普通は木の上なんかで寝ないんだ。大人が登ったら木が折れてしまうかもしれないし、木が可哀想だろ?」
「そっか・・・。」
「何してるんだ?早く馬車に乗ってくれ。」
僕たちが話していると、領主様が馬車に乗るよう言った。
「いや、俺ら宿とってなかったから。馬車に乗せてもらっても行くところがない。」
「ん?部屋なら私の邸に用意してあるぞ。」
「いやいやいやいや、貴族の邸に泊まるなど恐れ多くてできない。」
「だな。」
「シュペアを外で寝かせる気か?」
「いや、それは・・・。」
「どうせ後からミランも勝手に来るだろうし、気にすることはない。
あいつに比べたら君たちはとても礼儀正しくて真っ当な人間だからな。」
「しかし・・・。」
「うーん、じゃあ仕方ない。侯爵家当主からの命令を発動するか。
シュペア、ゲオーグ、ルシカは、私の邸に泊まること。これは命令だ!」
「う・・・そう言われると逆らえない。」
「分かった・・・。」
「うん、それでいい。」
領主様は嬉しそうに笑った。
「シュペア、邸の私の部屋にも妖精の絵があるんだよ。見るかい?」
「見たい。でもいいの?」
「あぁ、いいよ。」
「うん。」
僕たちは馬車で領主様の王都のお邸に行った。
暗いからよく見えなかったけど、凄く大きい建物だってことは分かった。
おじさんが玄関まで迎えに来てくれていた。
「おかえりなさいませ、旦那様。」
「ただいま、セバ。客室の用意はできているか?」
「はい。3部屋ご用意してあります。」
「俺らは3人で1部屋で大丈夫ですから。」
「クンストの宿も1部屋ですし。」
「僕たちは3人でベッド並べて一緒に寝てるんだよ。」
「そうか。じゃあその方が安心かな?
セバ、そのようにできるか?」
「すぐにご用意いたします。」
「あ、いや、そんなわざわざ用意しなくても、俺らは床でもいいんで・・・。」
「せっかく私が邸に招いたんだ。堂々と客人として寛いでくれればいい。」
「なんか、すいません。」
「じゃあ私の部屋に行こう。部屋の準備ができるまでお茶でも飲んでのんびりすればいい。」
領主様の部屋には、本当に妖精さんの絵があった。騎士団の部屋にあったものよりも明るい森だったから、きっと春なんだと思う。
綺麗な緑の景色だなぁ。
そういえばクンストの森も綺麗だって言ってた。
クンストに戻ったら行ってみたいな。
僕は妖精の絵を眺めながら、そんなことを考えていた。
「ゲオーグ、どうした?」
「あの机とか本棚に置いてある動物、クンストのギャラリーで見た領主様の像に似ていると思ってな。」
「お?ゲオーグ、よく分かったね。
作ったのは同じ作家なんだ。」
「筋肉のつき方が綺麗で、理想的なカットだったから。」
「それは私やこの作品の作家と気が合いそうだ。クンストの像は身体は彼のオリジナルで、顔だけ私なんだ。
ほらこれ、ミニチュア。」
領主様は、クンストで見た領主様の像を小さくしたものを僕たちの前に置いて見せてくれた。
「わぁ、凄い。クンストにあった像と同じだ。」
「凄い・・・。こんなに小さいのに細部まで綺麗だ。」
ゲオーグが目を輝かせて見てる。
「この作品の作家はAランク冒険者でもあって、私の冒険者仲間でもあるんだ。」
「凄い。Aランク。領主様もAランクなの?」
「いや、私は、つい最近Sランクに上げられてしまった・・・。
冒険者ギルドからの結婚祝いだそうだ。」
「凄い。やっぱり領主様は凄い!」
「幻とも存在しないとも言われていたSランクがとうとう・・・。」
「目の前にSランク冒険者が。ちょっと感動だ。」
「私はあまり冒険者としての活動はしていないんだけどね・・・。正直身に余るよ。
君たちもぜひSランクを目指してくれ。」
「いや、俺たちはまだAランクにもなっていないんで・・・。」
「そうか。まぁ君たちならいずれAランクになるだろうな。」
「俺らは、まだ実力不足です・・・。」
「さっき君たちと戦った戦士部隊の3人はBランク冒険者だ。シュペアの言葉で団長が面白がってそんな人選をしてしまったが、彼らよりも実力は上に見えたよ。」
「俺たちも、この半年で少しは強くなったのかな?」
「あぁ、そうだと嬉しい。」
「ゲオーグもルシカもとっても強いと僕は思うよ。」
「シュペア、ありがとう。」
「シュペアがそう言ってくれると、本当に強くなった気になるな。」
「そういうことで、君たちもぜひSランクを目指してくれ。」
「うん。僕たち頑張るね。」
「シュペアならいつか・・・。」
「かもしれねぇな。」
コンコン
「旦那様、お客様のお部屋の準備が整いました。」
「ありがとう。
さぁ、今日は王都まで移動したり色々なことがあって疲れただろう。部屋まで案内するからゆっくり休んでくれ。
風呂や洗面所も部屋についているから勝手に使ってくれて構わない。」
「領主様、ありがとう。」
僕たちは玄関で出迎えてくれたおじさんに案内されて部屋に向かった。
扉を開けると、机やソファーが置いてあって、遠くの方にベッドが3つ並んでた。
こんなに広い部屋に泊まるの初めて。
「あの、本当にここを使っていいのか?」
「えぇ。もちろんでございます。
旦那様より大切なお客様だと伺っております。ご不便がございましたら何なりとお申し付けください。」
「凄い。ベッドが大きい。部屋も広い。凄い。」
「あぁ、凄いな。」
「凄すぎる。」
「何も考えず、さっさと寝よう。考えたら疲れる・・・。」
「ゲオーグ、その案に俺も乗る。もう寝よう。」
「じゃあ僕ももう寝る。」
僕たちは、すぐにそれぞれベッドに入った。
ベッドは凄くふわふわで、雲の上に居るみたいだった。
次の日は、朝ごはんを食べてすぐにクンストに戻ることになった。
「本当は王都を案内してあげたいんだけど、急いで帰ることになってすまない。」
「いえ。またこればいいんで。」
「旅に出る前に騎士団に寄るんだし、その時にちょっと観光してもいいかもな。」
「うん。楽しみだね。」
帰りも、とても速いミランの馬車で帰った。
ミランが疲れ果ててあまり喋らなかったから、帰り道はとても静かだった。
「じゃあまたお披露目会の時に会おう。」
「うん。領主様、ありがとう。」
「「色々お世話になりました。」」
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