29. 初めての王都と騎士団本部3/3
「身体強化はあり、それ以外の魔術は禁止。武器は危ないから木の棒。剣士は木剣なら認める。以上。」
最初はゲオーグだ。
きっと大丈夫だと思う。ゲオーグは強いから。
ゲオーグの一撃はとても重い。それなのに、とても早い。足はそんなに早くないけど、斧捌きが凄く早い。
さっき見た戦士の人たちは、ゲオーグより遅いと思った。足も、剣や槍を捌くスピードも。
「ゲオーグ、頑張って!」
「あぁ。」
ゲオーグと戦う人は、ゲオーグと同じくらい大きくて、筋肉が凄くてゲオーグと似た体型だった。
「はじめ!」
団長が合図をすると、2人は身体強化をかけて走り出した。
何度か棒を打ち合って、離れたり近付いたりを繰り返していた。
うん。ゲオーグが優勢だと思う。
最後はゲオーグがカウンターを決めて終わった。
「いいねぇ、彼はまだまだ成長しそうだね。ちょっとほしいね。」
「団長、シュペアの仲間なんで余計なことしないでくださいよ。」
「もう1人も楽しみだねぇ。」
「はぁ、聞いてないし。」
ルシカと戦う相手も、ゲオーグみたいに大きくて筋肉が凄い人だった。
「ルシカー、頑張って!」
「おぅ!任せとけ!」
「はじめ!」
ルシカは足の速さを生かして駆け回ってヒットを稼いでいく。
うん。ルシカも大丈夫。勝てる。
やっぱり、筋肉が多すぎると遅くなっちゃうのかな?
でも、身体強化使えば速くなるはずだよね?使いたくないのかな?
そんなことを考えていると、ルシカの戦いも終わってた。
「こっちの彼もいいねぇ。セットで欲しいねぇ。」
次は僕だ。
僕は、ルシカとゲオーグ以外の人とは戦ったことがない。
大丈夫かな?さっきはルシカに負けちゃったから、今度は勝ちたい。
勝って、領主様に強いところを見せたい。
頑張ろう。
僕の相手は、大きいけど、さっきの人より筋肉が少なくて、ルシカみたいな体型の人だった。
「「シュペア、頑張れ!!」」
「うん!」
「はじめ!」
僕は身体強化を使っても力じゃきっと敵わない。だから、速く駆け回って隙を突くのがいいと思う。
相手が走ってくるのを僕は見てた。
あんまり速くない。きっと大丈夫。僕も勝てる。
相手が何度か仕掛けてきた攻撃を流して躱して、僕は走り出した。
僕は左右にステップを踏みながら相手の周りを不規則に駆け回る。
隙がある時は足を中心に棒で叩いた。
痛かったかな?ごめんね。
最後は、相手の手の甲を叩いたら、相手が棒を離して飛んで行っちゃった。
「君、強いね。」
「頑張って訓練してるから。
足、痛かったよね?大丈夫?」
「あぁ、これくらい大丈夫だ。心配してくれてありがとうな。」
戦ったお兄さんは大丈夫だって言って、僕の頭をフワッと撫でてくれた。
このお兄さんの手も、温かかった。
「ウィル、シュペア欲しい。くれ。」
「ダメだ。」
「団長、ダメだよウィルとシュペアは相思相愛だから~
俺も諦めたんだから、団長も諦めるしかないね~」
「残念だ・・・非常に残念だ。
くれとは言わない。たまに貸してくれるだけでも。」
「シュペアはこれから旅に出るんだからダメだ。旅から戻っている時にシュペアがいいと言うなら許可してもいい。」
「そうか。残念だ・・・。」
「じゃあそろそろ我々は飲み会に向かうか~」
「飲み会?」
「あぁ、私の中隊の飲み会だ。シュペアの歓迎会をしたいらしい。ルシカとゲオーグも一緒に行くぞ。」
「あ、あぁ。」
「・・・分かった。」
「ゲオーグ、俺らの意思は確認されないんだな。」
「そうだな。いつの間にか、決定されていたようだ。」
「自分も行きたいっす!」
「俺も行きたい!」
「俺も。」
「俺も~」
戦士も行きたいと言う人がたくさんいた。
「いいんじゃないか?言っておくよ。」
「イース、戦士も複数人参加するからよろしく。」
領主様は声に魔力を纏わせてイースという人に届けていた。
やっぱりこの魔術は便利だな。
しばらくすると、鳥が飛んできた。
領主様の肩に止まった鳥は足に紙が結ばれていて、領主様はそれを読んでた。
凄い。この鳥は手紙を届けてくれるんだ。
「今日は酒場を貸切にしたらしい。
場所はゲミューゼ、時間は今から1時間後。自由参加だ、参加したい者は適当に店に向かってくれ。」
「俺も行きたいが、この機会を逃したらミランが捕まらないからな。陛下のところまでミランを連行して、時間があれば顔だけ出すかもしれん。」
「え~俺も行きたい~」
「ミラン、お前はダメだ。仕事を片付けたら参加してもいいが。」
「意地悪~」
飲み会はとても楽しかった。
初めて、グレープジュースという紫のジュースを飲んだ。
色がすごかったから、ドキドキしたけど、とっても美味しかった。
トロトロのチーズがかかったジャガイモや、お肉が棒みたいになってるウインナーってのも美味しかった。
そして、みんなとっても優しかった。
色んな料理を勧めてくれたり、僕の話もよく聞いてくれて、褒めてくれた。
誰も僕が言ったことを疑わなかったし、怒る人なんて一人もいなくて、みんなすごく仲良しみたいっだった。
ルシカとゲオーグも楽しそうだった。
さっき戦った人とも仲良くなってて、ゲオーグは王都の美味しいケーキ屋さんも教えてもらったみたい。
「シュペア、中隊長の領地でのお披露目会が終わったら、旅に出る前に騎士団に顔を出してくれよ。」
「そうだ。せっかく仲間になったのに、しばらく会えないなんて寂しいだろ。」
「そこのルシカとゲオーグももう仲間みたいなものだから一緒にこいよな。」
「俺らもいいのか?部外者だぞ?」
「ルシカとゲオーグも騎士団に入ればいいのにな。実力は問題ないんだろ?」
「いや、俺はまだ冒険者としてやりたいことがあるから・・・。」
「そうなのか。それは残念だな。それをやり終わったら入ればいいんじゃないか?」
みんなが嬉しいことを言ってくれる。
僕たちもう仲間なの?一気にこんなにたくさんの仲間ができちゃった。凄い。
こんなにたくさん仲間ができるなんて、考えたこともなかったよ。
優しいみんなに、ありがとうって言いたい。
「みんなありがとう。僕、こんなにたくさん仲間ができるなんて思ってなかった。
みんなすごく優しいし、僕のこと仲間にしてくれてありがとう。僕は幸せ。
旅に出る前に騎士団に寄るね。」
「シュペアは素直で可愛いな~」
「癒されるな〜」
「待ってるよ~」
世の中には、こんなに優しい人がたくさんいるんだね。
村のことを思い出して少し苦しかったけど、みんなが優しくしてくれて、僕のこと応援してくれるから、僕は頑張れる。
たくさん戦って、たくさん勉強して、僕は必ず強くなるよ。
領主様は、僕や他のみんなとのやりとりをニコニコしながら見ていた。
目が合うと、ニコニコしたまま頷いてくれた。
「さぁ、そろそろお開きだ。」
「名残惜しい。」
「寂しいな。」
仲間になったみんなが、順番に僕の頭を撫でていく。
みんなの手は大きくて、温かかった。たくさん温かい気持ちをもらった。
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