27. 初めての王都と騎士団本部1/3
「領主様、護衛の騎士はいないの?」
「そうだね。私は王都へ行く時は護衛はつけていないんだ。」
「そうなんだ。じゃあ今日は僕が守るね。」
「あぁ。シュペアが守ってくれるなら心強いな。」
「俺らも、護衛させてください。」
「そうです。俺らまでこんな豪華な最新の馬車に乗せてもらって・・・。」
「そんなこと気にしなくていいのに。それにこの馬車はミランのだよ。早く走るための馬車だ。」
「この馬車、揺れないね。」
「そうなんだよ、シュペア君。いいところに気づいたね。この馬車は揺れないんだ。なぜなら風の魔術で馬車が浮いているから。
馬は重い荷物を引く負担なく、ずっと駆け足で走っていける。」
「そんなことできるの?
もしかして重力操作と風魔術の重ね掛け?」
「正解。よく分かったね。」
「すげぇな。」
「あぁ。すげぇとしか言いようがない。」
「クンストから王都まで、通常馬車なら4時間かかるところを2時間で行ける。それくらい速いんだ。」
「凄い。半分で行けるんだ。」
「シュペアは王都は初めてだろ?」
「うん。初めて。」
「そうか。王都はクンストより大きいし、大きなお城があるから楽しみにしてるといいよ。」
「お城?見てみたい。楽しみ。」
「シュペア君が手続きしてる間、君たちは騎士団の戦士部隊でも見学してみる?俺が案内してあげるよ。」
「いいのか?」
「ミラン、書類仕事から逃げるつもりだな。」
「バレたか。今回はいいでしょ?お客さんいるんだし。」
「団長や陛下に呼び出されても知らないからな。」
「ウィル、そういうフラグ立てるのやめて~」
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>>騎士団本部
「シュペア、シュペア、着いたぞ。」
「うーん?あ、僕寝ちゃってたの?」
「もうみんな降りたよ。」
「うん。」
せっかくの王都なのに、僕は寝ちゃって王都の景色を見れなかった。
馬車を降りると、とても大きな建物があった。クンストの領主邸より大きい建物。
その横には、さっきいた魔術演習場みたいな建物もあった。
「凄い、大きい建物!」
「ここがエトワーレ王国の騎士団本部だ。」
「じゃあ俺は2人を連れて戦士部隊の見学に行くから、また後でね~」
ミランはルシカとゲオーグを連れて歩いて行った。
僕と領主様が建物に入って、しばらく歩いていると、向こうから人が歩いてきた。
「あれ?ウィル、なんでいる?領地に行ったんじゃないのか?」
「はぁ、面倒なのに会ったな・・・」
「面倒とは失礼な。お?どうした?可愛らしい子供なんか連れて。」
「まぁいいか。
団長も私の部屋に来てください。彼に関する話があります。」
「ほう、まぁいいだろう。」
領主様の部屋に入ると、森と妖精の絵が飾ってあった。
「あ、妖精さんの絵がある。」
「お?坊主、この絵が妖精に見えるのか?怖くないのか?」
「うん。怖くないよ。えっと、僕はシュペアです。」
「俺は騎士団の団長。ここで1番偉い人だ。」
「そうなの?凄い!」
「そうだろ〜?
で、ウィル、この子を連れてきた理由は?」
領主様は魔術でお湯を出して紅茶を入れてくれた。
「あぁ、話せば長くなるから簡潔に言うと、この子を騎士団に入団させて私直属の部下にする。」
「そうか。ってはぁ?
意味が、意味は分かるが理由が分からない。経緯は?どうしてそうなった?」
「シュペア、目の色変えられる?」
「うん。」
僕はエメラルドの目を再現してみた。
「ちょっ、この魔術はウィルとミランしか使えないんじゃないのか?」
「シュペアにも使える。しかも、さっきミランが教えたばかりだ。」
「そうか。この歳にして魔力操作がかなり上手い、そして魔力が高い。
なるほど、魔術部隊に入れるほどの腕ということか。」
「そうだ。」
「分かった。ウィル預かりならいいだろう。まぁ幸い未成年の隊員という点では、ウィルという前例もあるしな。」
「そして、シュペアはこれから冒険者として仲間と一緒に旅に出る。長期研修ということだな。」
「ん?それはなぜだ?」
「要するに、シュペアに騎士団所属の肩書を与えることで保護するということだ。
この歳で魔術の腕は一流、容姿もいい。変な輩に目をつけられた時の対策だ。」
「なるほどな。
で、ウィルがそこまでこの子に入れ込む理由は?」
「ん?シュペアはいずれ私の側近になる者だからだ。」
「へぇ、もしかして、この子も小さい頃に約束した妖精か?」
「うーん、そんなようなものだな。」
「いや、マジか!冗談で言ったんだが・・・。」
「僕は、妖精じゃないよ。羽もないし飛べない。」
「良かった。こっちも人間だった。」
「ということで、団長にもシュペアの入団書類にサインをしてほしい。
魔術の技術的な部分はミランお墨付きだ。」
「分かった。」
「たまに戻ってきて顔を出すと思うから、この後、シュペアを隊員たちに紹介に行く。
団長はもう帰ってもらって構わない。」
「いや、俺も行くし。」
僕は、領主様が机に広げた何枚もの紙に自分の名前を書いていった。中には、冒険者になる時に聞かれた、得意な武器や得意な魔術を書くところもあった。
あの時はまだ文字を書けなかったけど、今なら書ける。
僕は得意な武器のところに槍と書いて、得意な魔術はなんて書こうか迷った。
「どうした?」
「得意な魔術、何を書こうか迷ってて。」
「さっきやった目の色を変える魔術でいいんじゃないか?」
「団長、そんなことを書いたら陛下に目を付けられる。」
「ウィル、お前のやることはだいたい陛下に知れてるし、未成年をウィルの配下に加える時点で目を付けられるだろう。」
「それもそうか。それなら、目の色を変える魔術と書くことで理由も察してもらえるか。じゃあそうするか。
シュペア、目の色を変える魔術と書くといい。」
「うん、分かった。」
「ん?シュペアは槍も使えるのか?」
「うん。僕は槍が1番得意なの。」
「そうなんだよ。実はシュペアは魔術も凄いが槍もかなりの腕だ。この歳にしてはという意味ではなく、大人と比べても。」
「ほぅ、それは見てみたいな。
シュペア、騎士団の戦士たちが戦ってるところを見たくないか?」
「うん、見てみたい!」
「じゃあ後で俺が連れて行ってやろう。」
「団長、シュペアを誘惑しないでくださいね。」
「そうだシュペア、騎士団の中では、私のことは領主様じゃなくて中隊長と呼ぶんだよ。」
「中隊長?」
「そうだ。それが私の役職なんだ。」
「分かった。」
書類を書き終わると、僕たちは魔術演習場に向かった。
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