182. 風魔術の練習1/2
今日も2話あります。
僕はイースのお手伝いの仕事を午前中で切り上げると、午後は風魔術の練習をするために中隊の演習場に向かった。
「シュペア、今日は魔術の練習するのか?」
「あれ、シュペアじゃん。1人なのか?珍しいな。」
中隊の人が話しかけてきた。
「うん。今日は風の練習しようと思ってるの。中隊の演習場なら1人でも大丈夫かなって思って。」
「あぁ、そうだな。俺らがいるからここなら安全だ。」
「何かあっても俺らが何とかしてやるから大丈夫だからな。」
「そうだな。どこか他の隊に行く時は誰かが付き添うから言ってくれ。」
「うん。みんなありがとう。」
「シュペアは俺らの大事な仲間だからな。」
「そうだよ〜」
「みんなは風魔術を自分にかけたりする?」
「自分にかけることはあんまり無いな。馬に乗る時くらいか?」
「そうだな。」
「俺は高い場所にある物を取る時とか、森で迷子になった時に高く飛んだことはある。」
「森で迷子になるなよ。それで高く飛んでどうだったんだ?」
「高く飛んだら遠くまで見えるかと思ったが、そこまで高くは飛べなかったから、結局高い木に登って方向を確認した。」
「あ〜まぁそうだよな。そんな高く飛ぶとバランスも取りにくいし下りるのも怖いよな。」
「そっか。僕は馬に乗る時に、鎧に足が届かなくて1人で乗れないから、風で飛ぶのを練習しようと思ったんだけど、みんなも馬に乗る時は風で飛んでるんだね。」
「そうだな。魔術師は飛んで馬に乗る奴が多いな。」
「だな。戦士はだいたい鎧に足掛けて乗るよな。」
「だな〜」
「そうなんだ。飛んで馬に乗るの教えてほしい。」
「いいよ〜」
「ふわっと自分を掬い上げる感じをイメージするといいと思う。」
「トルネードみたいに回転をかけると危ないから真っ直ぐにな。」
「攻撃を打ち出すようにするとスピードが出過ぎて危ないから、まずはそよ風程度で様子を見た方がいい。」
「うん。みんなありがとう。試してみる。」
そよ風くらいで真っ直ぐ上に掬い上げる感じ・・・。
ちょっと難しい。そよ風くらいの状態を維持するのも難しいし、確かに真っ直ぐにしないと上がった時にバランスを取れない。
でも真上に飛ぶだけじゃ馬には乗れないし・・・。
不安定な場所に立ってるみたいにグラグラする。
じゃあ、一気に凄く高くジャンプして、落ちる時にイーグルを風で包んで下ろした時みたいにゆっくり好きな場所に下りるってのはどうだろう。
一気に高く上がるのはちょっと怖いな。失敗して墜落したら怪我しそうだし。
でもそれが成功したら、馬に乗る時以外にも色々使えそうな気がする。
せーのっ!
「うわぁー」
「「「シュペアッ!?」」」
僕は攻撃付き結界に吹き飛ばされた時みたいにポーンと上に勢いよく上がった。
これ凄く怖い。それに上がりすぎた気がする。
上昇の勢いが止まると、目の前に演習場の天井があった。
危なかった・・・。もう少し強かったら天井に激突してた。
そして落下も凄く怖い。
風で自分を包んで、誘導・・・あ、これは失敗かも。上手く誘導できない。
対象を見ながら下すのはできるけど、対象が自分の場合はもっと練習しないと上手くコントロールできないみたい。
落ちるスピードは速いけど、スローモーションみたいに感じる。
骨、折れちゃうかな、身体強化と防御結界で怪我は最小限に抑えられるだろうか。
「何してんの〜?ってえぇ!?シュペア??」
あ、ミランだ。
一瞬ミランが見えた。
え?ミランが凄いスピードで僕に向かって飛んで、僕をキャッチするとゆっくり下りていった。