179. お休みの僕たち2/2
今日のゲミューゼのパスタはキノコとじゃがいものクリームソースパスタだった。
シチューみたいなところにパスタが入ってて、温かくて美味しかった。
「ルシカ、やっぱり変だな。大丈夫か?」
「いや・・・俺ダメかも。
好きな子ができたけど、彼女は騎士団の奴が嫌いらしい。戦うってことは野蛮だと思ったんだろうな。嫌われた。」
そんなことがあったんだ・・・。
僕はまだ好きな女の子とかいたことないから、何て言えばいいのか分からなくてゲオーグを見た。
「そ、そうか。ルシカの様子がおかしかったのは失恋したからだったのか。
俺は恋とかしたことがないから、こういう時に何て言えばいいのか分からん。
上手い言葉が見つからなくてすまない。」
「いや、下手に慰められるよりいい。ゲオーグ、ありがとう。」
ゲオーグも恋したことないんだ。
そうなんだ。大人はみんな恋したことあるのかと思ってた。
でもそっか。結婚してないもんね。きっと恋したら結婚するんだと思うから、結婚してない人は恋したことがない人もいるのかも。
僕もいつか好きな子とかできるんだろうか。
ルシカはいつ出会ったんだろう?
騎士団には女の人がいないし、お城の人とかかな?街で出会ったのかな?
「今夜は付き合う。飲むぞ。
シャーム小隊長とかそのへんの奴も誘おう。みんなと一緒に飲んだ方が楽しいだろう。」
「ルシカ、元気出してね。」
「あぁ。シュペアもありがとう。
よし!もう俺は恋愛なんかせずひたすら強い男を目指すぞ!
2人ともちょっと森まで付き合え。」
「あぁ、分かった。」
お店を出ると、僕たちは王都を出て森に向かった。
今日は武器もトレントの棒も持ってなかったけど、そっか僕、氷の武器作れるんだった。
「ルシカ、模擬戦したいってことでいい?」
「あぁ。あーしまった。武器を忘れた。」
「大丈夫。僕が氷の剣を作るから。」
「シュペア、ありがとう。もう俺、ダメダメだ・・・。ちょっとゲオーグ相手してくれ。」
「それは構わないが、大丈夫か?」
僕がショートソードを2本作って2人に渡すと、2人は模擬戦を始めた。
ちゃんと模擬戦ように刃はつけずに剣を作った。
当たったら痛いけど、それは模擬戦をするなら仕方ない。
僕は2人の戦いを見てたけど、ルシカの剣はいつもより勢いもないし、刀身もブレてるし、大ぶりで隙だらけだった。
無茶苦茶に振り回してるだけみたいな戦い方に見えたけど、きっとこれでルシカは辛さを解消してるんだろうって思った。
ゲオーグも最初は戸惑ってたけど、ちゃんとルシカに合わせて受け流したり、剣を合わせたりしてた。
でも、そんな戦い方だから、ルシカはゲオーグの剣を受け止めきれずに剣が飛んでいった。
積もった雪の上に大の字に倒れていくルシカ。
「俺、騎士団に入らない方が良かったのかな?
騎士団に入らなかったら、あの子は俺の隣にいてくれたのかな?」
「ルシカ・・・。」
そう言ったルシカの目の端には、涙が光った気がした。
失恋ってそんなに苦しいんだ・・・。
その後、一旦寮に戻って、シャームとか小隊のみんなとか、その辺にいた中隊の人を誘って飲みに行った。
「ルシカ〜なんだよ〜言ってくれれば合コンでも開いたのに〜」
「いや、俺はそういうのは・・・」
「まぁいいから飲め。飲んで忘れろ。ルシカにはもっといい女がいる。」
「あ、あぁ・・・。」
なんかルシカは絡まれてる?
でもちょっと楽しそうだし、ゲオーグが見守ってるから大丈夫かな。
「シュペアは俺らとは初めましてだよね?
シャーム小隊長とは共闘したとか聞いたけど。」
「うん。僕はシュペアです。最近はフェルゼン中隊長の仕事を補佐のイースと一緒にしてるから、戦士部隊の訓練には行ってないの。」
「そっか〜
シュペアもかなり強いって聞いたよ。」
「そんなことないよ。ほら僕小さいでしょ?だから足も遅いし力も弱いし、身体強化使ってもまだまだ弱い。」
「え〜色々凄い魔術を使うって聞いたよ。リザードマンを小隊長より先に倒したとか。」
「どうだろう?魔術は使えるけど、そんなに凄いのは使えないかも。あの時は僕がリザードマンの剣を上手く受けられなくて飛ばされちゃったから、咄嗟に魔術の槍を放って倒したの。」
「そうなんすよ〜
シュペアはリザードマンを氷の檻に閉じ込めて魔術で一撃で倒したんす。あれを見た時に自分はまだまだなんだと思ったっす。
君らも戒めのためにシュペアの魔術を一度は見た方がいいっすよ。」
「戒め!?シュペアはこんなに可愛いのにそんな凄いことするの?」
「シュペアは中級魔術にも耐えられる練習用の的をファイヤーボールで壊したって聞いたっす。」
「マジか〜スゲ〜」
「その話なら俺も聞いた〜」
「だよね?」
「そう、です。的を壊してしまいました。」
僕が的を壊しちゃった話、そんなに広まってるんだ。
なんか申し訳ないし、恥ずかしい。
「僕の失敗した話、そんなに広まってて恥ずかしい・・・。」
「失敗?なんで?成功じゃなくて?」
「全然恥ずかしがることないよ〜『俺は的壊せるぐらい強いんだぜ!』って誇ってもいいよな。」
「そうなの?」
「そりゃそうだろ〜だってそんなことできたら格好いいもんな。」
「シュペア、壊したこと気にしてたんだな。中隊長なんか何度も壊してるし気にすることないよ。」
「そうだぞ〜」
「だな〜」
「俺なら自慢する。」
「それは壊してから言え。」
そうなんだ。領主様は何度も壊したんだ。
格好いいことなの?よく分からない。
でも、中隊のみんなも、戦士のみんなも気にすることないって言ってくれたから、大丈夫なのかも。
ルシカは大丈夫かなってチラッと見てみたら、周りのみんなと肩組んで知らない歌を歌ってた。なんか元気になったみたいでよかった。
「シュペア、今度戦士の訓練にも遊びに来てよ〜」
「うん。行ってみたい。またシャームが戦ってるところも見たい。」
「また見たいなんて言われると照れるっす。シュペアにそんなこと言われたら見せるしかないっすね〜。」
「今日も可愛いシャーム小隊長が出た!しかも今日は可愛いシュペア付き。」
「よし、今週はいいことあるぞ。」
「やったな。」
シャームの小隊のみんなも仲良しなんだ。
閲覧ありがとうございます。