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166. お仕事体験とタルツ先輩


中隊長の仕事、領主様の仕事を体験してみる。


「ルシカとゲオーグはシャームのところに行くの?」

「あぁ。」

「あの人の動きをもっと見たい。教わりたいと思った。」


「僕は中隊長のお仕事見てみたいから、中隊長のところに行くね。」

「分かった。」

「中隊長のところなら安全だな。」


僕たちは寮を出ると、それぞれの目的地へ向かった。


コンコン

「シュペアです。」

「入っていいよ。」


「おはようございます。」

「おはよう。」

「シュペアおはよう。どうしたんだ?」


「中隊長はどんな仕事をしてるのか見てみたくて。」

「なるほど。ちょうどいい。私は来月からしばらく休むから、その間イースと一緒に中隊をまとめてくれ。」


「え?中隊長休むの?」

「そうなんですよ。奥方様が来月出産予定なんですが、それに立ち会いたいと、そしてしばらくは育児をしながら家族で過ごしたいと。」


「そうなんだ。赤ちゃんもうすぐ産まれるんだね。」

「そうなんだ。だからそれまでに頑張って仕事を覚えてほしい。領地の補佐のタルツも紹介しよう。」


「分かった。頑張ります。」

「うん。シュペアなら大丈夫だ。イースもいるしな。」


中隊長補佐のイースの仕事はたくさんあった。

中隊の備品の管理、中隊長の予定管理、中隊の予定管理、書類の整理、遠征がある時にはルートの確認や費用・日数の計算、人員配置の連絡。訓練や討伐の報告書の整理。要望の整理や改善。


中隊長はイースが補佐になるまでそれを1人でやってたみたい。

中隊長はその仕事に加えて、会議に参加したり、訓練のメニューを考えたり、一人一人と面談したり、団長からの指示を各隊に振り分けたりしてる。


僕がまずは教えてもらったのは書類を整理する仕事。色々な申請とか、要望とか、色々な報告とか、もうたくさんの種類があって、それを分けるだけで凄く大変だった。

分けておいたものを、まとめていくのも凄く大変で、それだけで終わっちゃうこともある。


書類の仕事で疲れた頃、中隊長に付いて色んなところを回った。演習場に行って少し体を動かして、ワークスペースに行って書類を書いてる人に書き方を指導したり、相談に乗ったりして、また中隊室に戻る。


平日はそれを繰り返して、早朝のトレーニングもやった。

毎日こんなに大変なんだ・・・。



週末には、フロイに一緒に乗せてもらってクンストに行って、領地の補佐を紹介してもらった。


「僕はシュペアです。よろしくお願いします。」

「私はタルツァー、領主様の護衛兼補佐をしております。領主様が不在の平日は、代官の補佐と代官や前侯爵ご夫妻の護衛や、護衛騎士の指導などをしています。」


領地で領主様の護衛兼補佐をしている人は、サラサラな濃いブルーの髪にサファイアのような綺麗な目の、立ち姿が格好いい騎士の人だった。


「シュペア、タルツは元Aランク冒険者なんだよ。タッシェのファルトの仲間で、彼はロングソードと魔術を使うから、戦いの参考にもなるかもしれないね。

口数は少ないけど真面目で優しい人だから安心するといい。


タルツ、シュペアは未来の私の側近だ。今は冒険者として各地を回りながら勉強中なんだ。来月から私はしばらく仕事を休んで家族と過ごしながら育児をするから、その間の補佐を手伝ってくれる。

タルツの後輩だな。」


先輩だ。Aランク冒険者か。この人も凄く強いんだ。なんか分かる気がする。

サッと領主様を守る位置に立ったり、何が起きても守れるように隙もない。

今まで見てきた護衛の人は何人かで囲んで守ってたけど、この人は1人で守るための計算をしてるみたい。



「格好いい。タルツ先輩、色々教えてください。その立ち位置は計算してるんですか?」

「あぁ、よく分かったな。旦那様の側にいる時や護衛をしている時は、だいたい1キロほどの索敵を常に広げているが、それでも飛び道具を使われる可能性もあるから、どこから何が来ても旦那様を守れる位置にいる。

壁の位置や窓の位置を見ながら立ち位置を決めるんだ。外なら建物や人との距離感も考慮する。」


凄い。そんなことまで考えるんだ。

イスパーダを護衛する時、僕は全然そんなこと考えてなかった。

襲撃が始まってからは守る位置に立ってたけど、それはみんなで四方を囲む方法だったから、もし僕が1人だったら守れなかったと思う。


「凄い。四方を護衛で囲むんじゃないんだね。」

「あぁ、王族や戦う術を持たない者を守る時はそうするんだが、旦那様はそういうのが嫌いだからな。

君も周りを人の壁で固められて歩くのは嫌だろう?」


ラジリエンのお城で大盾の人に囲まれて歩くのは大変そうだった。


「そっか。確かにそうかも。」

「旦那様はクンストを歩くと領民が寄ってくる。しかし刺客が紛れていないとも限らないから、人が近付く時こそ細心の注意が必要だ。

常に守れる位置に立つようにしなければならない。」


「結界じゃダメなの?」

「結界でもいいが、ただの領民や子供が近付いて弾かれるようなことがあってもよくないからな。」


結界を使わないで守るなんて凄い。

僕は魔術に頼りすぎてるのかも。もっと技術を磨かないといけないし、もっと考えなきゃいけないんだ。


「そっか。確かに。領主様は領民を大切にしてるから、結界で壁を作るようなことは望まないんだね。タルツ先輩、勉強になります。」

「シュペア、君は理解が早い。まだ子供だろう?それにその手、かなり訓練を積んでいるな。」


「訓練はしてるけど、僕はまだ弱い。」

「大丈夫だ。その歳でそれだけ努力をできるのなら、必ず強くなる。」


「うん。僕、頑張る。」

「シュペアは偉いな。出会った頃のファルトを思い出す。」


今まで会ったどの強い人とも違う。タルツ先輩は本当に凄い。

たぶん連携もできると思うけど、たった1人で全てをカバーできるよう計算している。

それも凄いことだけど、それを実際にやろうと思うとかなりの実力がないとできない。

この人に教えてもらえるってすごく幸運なことだと思う。


閲覧ありがとうございます。


タルツ先輩は「ある料理人と元騎士の話」に出てくる騎士です。

「拾われた戦争孤児が魔術師として幸せになるまで」でも83〜85話、94話にも登場しています。

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