157. エトワーレ到着2/2
「それでな、割と重要な話だが、陛下がお前たちに会いたがっている。」
「え?王様が?なんで?」
「そりゃあな、トルーキエの王を動かして、ラジリエンの王からも感謝の手紙と友好的な関係を築きたいとの申し出があったからな。騎士団長からもお礼の手紙が届いていた。
当然だろう。」
「なるほど、それで制服か・・・。しかし俺たちは平民だ。」
「だよな。」
「平民だろうが功績は功績だ。国に与えた影響は大きい。そしてお前たちに拒否権はない。」
「・・・分かったが、俺たちはマナーが十分ではない。」
「僕たち、また謁見室みたいなところに行くの?」
「そうなるだろう。まぁその時はウィルも一緒だから、マナーはウィルの真似をしていればいい。
別室に移動したあとは、そんなに堅苦しくしなくてもいい。」
「そっか。中隊長がいるなら大丈夫かな?」
「俺は不安だ。」
「俺も・・・。」
「じゃあ謁見室のマナー講習やっとくか?陛下も今すぐにというわけじゃない。1週間くらいは余裕もあるだろう。」
「お願いしたい。」
「分かった。手配しよう。」
「団長、俺たちは正式な手続きをしていないのに騎士団の身分証を使った。
何か処分はあるだろうか?」
「無いな。処分があるとすれば俺だな。
お前たちに身分証を渡したのは俺だからな。責任は俺にある。
まぁ、これだけの功績を持って帰って来たんだ。褒められることはあっても咎められることはない。
俺も褒められたしな。」
「そうか。団長、あの身分証で助かった部分もある。ありがとう。」
「ありがとう。」
「いや、いいんだ。むしろ俺としてはラッキー。
いつか入れるつもりだったが、こんなに早く入ってくれることになったからな。
ウィルから聞いたが2人ともまた強くなったんだろう?
王都にいる間は戦士部隊の指南をしてくれると助かる。
調子に乗っている奴をボコボコにするだけでもいい。」
「分かった。俺たちにできることがあれば協力しよう。」
「だな。」
「そうだそうだ、あと一つ。2人は俺の直属の戦士になっているからな。もし旅をやめることになったら、その時には隊の振り分けを行う。今はどこの隊にも自由に出入りしていい。」
「「・・・?」」
「あぁ、組織のことは分からないか。
戦士は俺の下に部隊長がいて大隊長が2人とその下に中隊長、小隊長、分隊長、ただの隊員と続く。
魔術師は俺の下に部隊長のミラン、大隊は無い。ウィルを含む中隊長、小隊長、分隊長、ただの隊員と続く。
近衛は俺の下に部隊長、隊長、ただの隊員と続く。
どの隊にも属していない者は、その辺の隊長の指示には従わなくていい。
ルシカとゲオーグは、俺以外には従わなくていい。シュペアはウィルとミランと俺以外には従わなくていいということだ。」
そうなんだ。
僕たちは団長の話が終わると、領主様に寮に案内してもらった。
そっか。寮は1人ずつの部屋なんだ。
宿に戻って荷物を取ってくると、僕たちはそれぞれの部屋に荷物を置いた。
ここ、僕の部屋なんだ。凄い。僕だけの部屋。
好きなもの置いていいんだ。
大人になったみたいで嬉しかった。
「中隊長、僕たち武器を作ってもらうために鍛冶屋さんを探しに行ってもいい?」
「あぁ、いいけど当てはあるのか?ミスリルだろう?その辺の鍛冶屋では扱えないよ。」
「無いけど、僕たち鍛冶屋さんの知り合いなんていないし。」
「じゃあシュヴェアトの剣を作ってくれたシュミーツを紹介しようか?
あの人ならミスリルシルバーを加工できるからミスリルもいけるだろう。」
「いいの?」
「シュペアたちには、いい武器を使って安全に旅を進めてほしいからな。
昼食をとってから向かうか。」
僕たちは食堂でみんなと一緒にご飯を食べた。
ご飯を食べていると、僕たちに気付いた戦士の人とか、中隊が違う人が、代わる代わる声をかけてきた。
「シュペアたち無事だったんだな。よかったな。」
「ルシカ、また模擬戦しようぜ。」
「ゲオーグ、俺とも戦ってくれよ。」
「シュペア、久しぶりだな。」
「シュペアは相変わらず可愛いな。」
みんな僕たちのこと覚えててくれたんだ。
嬉しい。
「シュペアたちは人気者だな。」
隣に座っていた領主様が微笑んでくれるから、周りもみんなニコニコしてる。
ここのみんなは本当に優しい。僕はここに帰って来れてよかった。
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