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142. アサイー


今日は少し雲が浮かんだ空だった。

太陽がたまに雲に隠れて、日差しがキツくなくて外でも過ごしやすい。


イスパーダとモルさんには、ルシカとゲオーグが前に買ってたカツラを貸してあげた。


いつものイスパーダとモルさんを知ってるから、全然似合ってないけど、これなら絶対バレないと思う。


護衛騎士隊の人たちも、私服で街に散らばってるみたい。

僕は白のローブを目深に被って、目の色を茶色にした。

なぜか領主様も白いローブを目深に被ってる。


領主様は隠れる必要ないんじゃないかな?


お城から馬車で平民のお店が並ぶ手前まで行って、そこからはみんなで歩いた。


昼間の街を歩くのは久しぶりだ。

僕は逸れないようにゲオーグと手を繋いでる。

ゲオーグは強そうだから、ゲオーグの側にいるのが1番安全だから。


今日はみんなの結界を領主様がかけてくれてる。触れると気絶しない程度の弱い雷がバチッてなるやつみたい。

街の中なのに弱いけど攻撃付きの結界使って大丈夫なのかな?


「すいませーん」


少し歩くと、領主様に声をかける女の人がいた。領主様はその人を見向きもせず無視して進んでいく。

どうしたんだろう?聞こえなかったのかな?


少し進むと別の女の人が「お兄さーん」って言いながら近づいてきて、領主様に腕を絡めようとして雷が走って逃げてった。


また少し進むと女の人が領主様に声をかけて触れようとして、雷が走って逃げていった。


そんなことが何度もあった。


「なんか、ウィル大変そうだね・・・。

だからフード被って顔隠してたのか。顔隠してもそんなに女が寄ってくるんだ?」

「あぁ・・・私は人間の女なんか嫌いなんだ。」


「そういえば、奥さんは妖精だとか言っていたね。」

「あぁそうだ。彼女は妖精で天使なんだ。」


「なんかますます気になる。」


なんか分からないけど、領主様はリーゼ様以外の女の人は嫌いみたい。

声かけて触ろうとするからかな?知らない人に急に触られるのは僕も嫌かも。

そっか。このために攻撃付き結界にしてたんだ。


屋台が並んでる場所にいくと、モルさんが屋台の人に何か言って、お店の人が黄色い箱をしまってた。


「おじさん、アサイー6個ください。」

「はいよーちょっと待ってな〜」


お金はモルさんが払ってくれた。

おじさんがアサイーを渡してくれると、僕たちは2つのベンチに分かれて座って、街を眺めながらアサイーを食べた。

パインが乗ってたらどうしようって思って少し不安だったけど、パインは乗ってなかった。


「ゲオーグ、アサイー美味しいね。」

「あぁ、久しぶりに食べたら美味しいな。な、ルシカ。」

「あぁ。美味いな。」


「中隊長、アサイー美味しい?」

「あぁ、シュペアが勧めてくれるだけのことはある。暑い日でも食べやすいな。フルーツがたくさん入っていて美味しい。」


声が・・・

領主様を見ると、前にクンストで会った時のおじさんの姿に変装してた。


「イスパーダ、屋台のアサイー初めてでしょ?どう?」

「美味しいよ〜

シュペアが、ベンチに座って街を眺めながら食べるのがいいって言っていたのがよく分かる。朝に食べるのがまたいいな。」


「そうなの。」


「そうだ、ウィルーって、え!?誰!?ウィルは!?」


おじさんの変装してる領主様に驚いたイスパーダが面白い。ふふふ。


「あぁ、すまん私だ。ウィルだ。食べている時くらい誰にも近寄られたくなくてな。」

「ウィル、なの?

知らないおじさんがいるのかと思って焦った・・・。

シュペアたちが何にも反応してないってことは、本物なんだね。」

「うん。僕たちは中隊長が魔術でおじさんに変装してるの見たことあるから。」


「魔術でそんなこともできるのか。何でもありだな。」

「イスパーダ、私はそろそろ帰ろうと思う。」


「そうなの?」

「あぁ。中隊のこともあるし領地もあるし、何よりリーゼに会いたい。」


「そ、そうか。で、いつ帰るんだ?」

「今日だ。」


「え?今日?早くない?」

「私の仕事は終わったしな。この後、ギルドで伝言を残したら午後には。」


「分かった。報酬、あんなもんじゃ足りないんだが、用意できた分だけとりあえず渡す。」

「あぁ、急かして悪いな。」


そっか。領主様帰っちゃうんだ。

僕たちはどうしよう。

僕はルシカとゲオーグを見た。


「じゃあ俺らも同じタイミングで。」

「シュペアたちはまだダメ。ミスリル探してるけどまだ見つかってないから。」


「じゃあとりあえず俺らは中隊長と一緒に城を出て、街の宿に移る。」

「そんなのダメだよー

ミスリル用意できるまで城にいてもらう。」


「いやしかし・・・俺らだけじゃマナーとかまだ不十分だし、中隊長がいないと不安というか・・・。」

「俺がいるでしょー?不安ならアセロかマージア付けようか?

とにかく、城にいるのは絶対。これは命令。」


「・・・はい。」


そっか。僕たちはまだ帰れないんだ。

何してればいいんだろう?

たまには模擬戦とかやりたいな。最近走ってないし。


僕たちはアサイーを食べ終わると、器をお店に返して冒険者ギルドに行った。

そっか、依頼受ければ時間潰せるかも。


依頼の掲示板を見てみたけど、お手伝いと護衛と薬草採集しかなかった。


「いいの無いね。僕たち何して過ごせばいいんだろう?」

「だよなー」

「困ったな。演習場の端を借りて模擬戦とかやれないかな。最近体を動かしていない。」


「お城出て街を見て歩いてもいいかな?」

「いいんじゃないか?」

「そのまま森にでも行きたいな。」



今日も領主様は補佐のイースにリーゼ様への伝言を残してた。

「エトワーレ王都のイースに伝言を。

『今日ラジリエンの王都を発つ、寄り道はなるべくせず最短距離で急いで帰る。

リーゼに愛していると、離れていても私の心はいつもリーゼの側にあると伝えてくれ。』と。

以上だ。」


「ウィル・・・うん、なんかウィルだしな。いいと思う。早く帰ってあげて。」

「あぁ。」


その日の午後、中隊長は王様と団長さんや近衛騎士、護衛騎士隊のみんなに挨拶をして、フロイと共に帰って行った。



閲覧ありがとうございます。

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