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132. ラジリエン王都の街(ルシカ視点)


前日の夜まで遡る。


「ゲオーグ、なんか、とんでもないことになったな。」

「あぁ、さすがに考えないようにするにしても、この金色の部屋は目を開けている限りどうにもならん。」


「俺も子供でシュペアみたいに眠ってしまえたから良かったなー」

「確かに。シュペアが羨ましい。」


「まさか俺の人生の中で、王城に泊まる日が来るなんて思いもしなかった。」

「俺もだ。王城になど入ることすら無いと思っていた。今回の護衛も、城門までで終わって、俺らはその辺の宿に泊まって王都を観光でもできたらと思っていた。」


「俺ら、いつまでここに居ればいいんだ?」

「さすがに中隊長がいるうちは、ここに居るんだろうな。」


「確かになー。俺としては今すぐ出たい気持ちがあるが、それは無理なんだろう。」

「中隊長が帰国するタイミングで一緒に出るしかないな。」


「だな。別に俺ら王城に用なんか無いしな。

それより中隊長が来てくれてよかった。もし俺ら3人だったら、王様との謁見なんてどうしたらいいのか分からなかったし、話しかけられてもどうすればいいか分からなかった。」

「騎士団でマナー研修を受けさせられて、やる意味が分からないと思っていたが、やっていて助かった部分もあった。戻ったら団長にお礼を言いにいかなければな。」


「そうだよなー。騎士団の身分証も思わぬところで役に立ったし。」

「あの場で身分証が無ければ、俺らは変な疑いをかけられて危なかったかもしれん。」


「それにしてもラジリエンの王都かー。観光してみたいな。今まで王都はエトワーレにしか行っていないからな。

次旅に出る時は、他の国の王都にも行ってみたいな。」

「そうだな。色んな国の城も見てみたいな。

外からな。」


「あぁ。もう王族の護衛は十分だ。」

「終わったんだな。」


「そうだな。」

「疲れたな。」


「あぁ。」

「寝るか。」


「そうだな。おやすみ。」

「おやすみ。」




----


>>>翌日


「シュペアはまだ起きないな。やはり相当疲れてたんだろうな。」

「そうだよな。人が亡くなる場面も見ただろうし、毒も・・・。」


シュペアが毒で倒れた時のことを思い出したのか、ゲオーグの目が潤んでいる。

ゲオーグも、かなり疲れてんだろうな。


「俺ら、城の中では騎士団の制服を着ていればいいのか?」

「どうだろうな?白だから汚しそうだ・・・。」



そんな話をしていると、中隊長が部屋にやってきた。


俺らの格好を見て、街に服を買いに行くと言う。しかも中隊長が買ってくれるとか。

いいんだろうか。

俺らは可愛がっているシュペアのついでかもしれないな。


中隊長がアセロ隊長に連絡をして、しばらく待っていると、アセロ隊長が1人部下を伴って部屋を訪ねてきて、一緒に街へ行くことになった。


レーマンを出てからは冒険者としての服しか着ていなかった。女の子とデートに行くより、シュペアやゲオーグと一緒にいる方が楽しくなって、荷物になるような服は捨ててしまったからな。


ちょっと裕福な平民が入りそうな店に入って、俺はこの国のしきたりとかよく分からないから、色々服をあてがわれて、アセロ隊長と中隊長に選んでもらった。


暑いから、ゆったりとした透けるように薄い生地を何枚か重ねた服で、ズボンもゆったりして、裾が折り返してあって足首が出ているものが一般的らしい。


緑と黄色の派手なものなどもあったが、俺は夏だし白にしてもらった。

ゲオーグは少し青みがかった白を選んでいた。

シュペアのは、しっかり目深に被れるフードがついた真っ白なローブに銀色の刺繍が入った、ローブなのにちょっと高級に見えるようなものを選んでいた。

きっとあれを着たシュペアも可愛いだろう。



その後、冒険者ギルドに案内してもらった。


「Sランクのウィルだが、伝言は来ていないか?」

「伝言は3件届いていますよ。」


「全て確認する。」

「まず、クンストのモスケルさんから『ミランがチョコレートを買ってきて欲しいと言っている。伝言は領主邸に伝えた。気をつけて帰ってきてくれ。』と。

次にエトワーレ王都のシャームさんから『自分も付いていきたかったっす。』と。

最後にエトワーレ王都のイースさんから『無事合流できてよかったです。団長から、陛下も心配しているがウィルなら完遂してくれるこを信じて待つと、奥方様からも私も愛していますよとのことでした。』と。」


「そうか。リーゼ・・・早く会いたいな。」


中隊長は本当に奥さんのことを溺愛してるんだな。この前も恥ずかしげもなく愛しているとか伝言していたしな。



「伝言をお願いしたい。

クンストのモスケルへ『無事王都へたどり着いた、数日滞在したら戻る』と。

エトワーレ王都のシャームへ『自力で頑張れ』と。

エトワーレ王都のイースへ『無事王都に着いたから安心してほしい。相手方との関係も良好だ。数日滞在したら帰国する。トレントを狩っていくから倉庫を空けておくように。リーゼに君を想わない日は無い、寂しい早く会いたいと伝えてくれ。』と。

以上だ。」


美しく涼しい顔して、はぁー俺もそんな愛する相手に出会いたいものだ。



「・・・ルシカ、ウィルさんの奥方様はどんな方なんだ?」

「あー妖精だったかな。」


「そうなのか!?なるほど・・・。」

「いや、人間だと思うが、可憐で妖精のような方だ。」


「あの完璧なウィルさんを虜にする方なのか。見てみたいな。」

「俺らは中隊長が結婚した時、領民へのお披露目会で会ったんだが、仲睦まじくお似合いの2人だった。」



「アセロ隊長、シュペアが起きたらイスパーダを街に連れてくるから、ちょっと街の下見をしておこう。護衛騎士隊も街に配置するのだろう?

狙われやすそうな場所と屋台の場所も確認したい。」


結界さえかけておけばいいと思っていたが、しっかり下見もするんだな。さすが中隊長だ。

街の一般人が巻き込まれてもいけないからな。


「ルシカ、ゲオーグ、危ない場所を教えるから一緒に回るぞ。

何かの役に立つかもしれないしな。ちゃんと覚えて今後に役立てろ。」

「「はい!」」



やっぱり中隊長は上に立つ人なんだな。

シュペアにだけじゃなく、俺らの勉強のためにも色々教えてくれる。

シュペアが中隊長の側近になったら、俺も冒険者は辞めて本当に騎士団に落ち着くのも有りかもしれない。


時期が来たらゲオーグとも相談してみないとな。



その後、見通しの悪い場所や、弓で狙うのに敵が隠れやすい場所、敵が潜めそうな路地裏、木箱が積み重ねられた店の裏や空き家など、注意する場所を教えてもらって、実際にどう攻撃されてどう対処するかも、アセロ隊長と共に実演してくれた。


実演してくれたから、資料を読んで勉強するより分かりやすかった。



「部下をもう少し連れてこればよかった。

こうやって部下を教育していくんだな。分かりやすくとても参考になる。

午後に私も部下を連れてきて同じことをやってみようかな。

ウィルさんの部下であるルシカたちが羨ましいよ。」

「そうだな。俺も中隊長に指導を受けられることは幸せなことだと思う。」


ゲオーグをチラリと見ると、アセロ隊長が連れてきた騎士と同じような話をしていた。


一通り下見が終わると、俺たちは城へ戻った。

午後はイスパーダが部屋を訪ねてきて、お茶を飲みながら他愛もない話をして過ごした。


何で俺は城で王族とお茶を飲んでいるんだろうな?

冒険者ってこんなんだったか?

ゲオーグはまた考えるのをやめたようだ。



閲覧ありがとうございます。

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