128. 謁見1/2
『このまま王城へ入り、エトワーレの皆さんにはイスパーダ様と共に陛下に謁見してもらいたいがよろしいか?』
馬車の外から近衛の隊長さんが話しかけてきた。
王様に会うの?僕も?
どうしよう・・・。ちょっと怖い。
「了解した。今の格好では失礼に当たるだろう、着替えさせてもらってもいいか?」
『構いません。お部屋を用意します。』
そっか、王様に会うのにこの格好はダメなんだ・・・。
でも僕、綺麗な服なんて持ってない。
ルシカとゲオーグを見ると、2人も困った顔をしていた。
「心配するな。こんなこともあろうかと3人の分も騎士団の式典用の制服を持ってきている。」
「俺らのもあるのか?」
「シュペアのは前から作ってあったんだが、ルシカとゲオーグのは団長から先日一式預かっていたんだ。」
僕のもあるんだ。
式典用の制服ってどんなのだろう?
騎士団の制服着てみたい。
最初の大きな城門をそのまま通り過ぎて、次の城門で武器を回収された。
外に出る時に返してくれるみたい。トレントの棒は回収されなかった。
「心配せずとも大丈夫だ。
私が対応するから、3人は個別に何か質問されたら答えればいい。
マナー研修は何度か受けただろう?上手く出来なくても私がフォローするから大丈夫だ。」
「大丈夫だよ〜
俺も一緒にいるし。謁見なんて言ってるけど、そんな堅苦しいものじゃないと思う。」
ドキドキする。
でも領主様がいればきっと大丈夫。
「イスパーダ、城の中では狙われることはないのか?城の中でも危ないのなら、私が滞在中は結界をかけておくが。」
「お願いしたい・・・。
間者が紛れ込んでいることがあるんだ。昔、何度か襲われかけた。」
お城の中も安全じゃないんだ・・・。
お城の敷地をしばらく進むと、馬車は止まった。
僕たちは馬車を降りて近衛の隊長さんに続いて歩いて行った。
「私の黒馬は誰かが厩舎に案内してくれるんだろうか?」
「はい。手綱があれば借りたいのですが。」
「あぁ、これだ。
フロイ、厩舎まで案内してくれるそうだ。手綱を持った人が行くから大人しく厩舎で待てるな。」
ヒィーン<大丈夫>
「あいつは人の言葉をだいたい理解しているから、おかしなことをしなければ大人しく従う。よろしく頼む。」
「畏まりました。」
長い廊下を歩いて、綺麗な扉の部屋に入った。
「こちらで着替えていただけますか?
謁見の準備ができたら呼びにきます。」
「分かった。」
領主様は机の上に鞄から出した制服を置いた。
これが制服なんだ。
真っ白の艶々な布に、銀と青の刺繍となんかロープみたいなのが付いてて、肩にはふさふさしたのが着いてる。銀貨みたいな綺麗なボタンがついてて、持ってみたらちょっと重かった。
「シュペアはそのままでいいか。ルシカは髪を少し整えた方がいいな。ゲオーグは髭はどうする?剃るか?まぁ整える程度でいいか。
サイズは大丈夫だと思うが、とりあえず着てみてくれ。着方は分かるか?」
「はい。」
領主様は手際良く着替えて、最後に真っ白なマントを付けた。
格好いい。
ゲオーグとルシカも着替え終わって、領主様が2人にマントを付けてた。
「ルシカもゲオーグもいつもと全然違う。格好いい。」
「そ、そうか?」
「なんか、重いな。肩も窮屈だ。」
「そこは我慢してくれ。式典用の服だから、戦うことを目的としたものではないんだ。
シュペアも着れたか?
私がマントを付けてやろう。」
「うん。」
「・・・これは、ダメだな。謁見室に入るまでシュペアには認識阻害をかけておこう。」
「僕、変?似合わなかった?」
「いや、凄く似合う。可愛いし格好いい。
だから変な貴族の目に触れれば狙われるだろう。攫われたら困る。」
「確かに。」
「あぁ。」
「そっか。似合うんだ。良かった。」
その後しばらくして、近衛の隊長さんが呼びにきた。
それで僕たちは廊下を歩いて謁見室という部屋に向かった。
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