127. 15日目、王都へ
その後も何度か矢の攻撃を受けて止まることはあったけど、そのまま進んで行った。
「矢の攻撃だけなんだね。」
「これだけたくさんの騎士を相手にするのは大変だろう?だから敵は隠れてこっそり攻撃できる矢を使っているんだ。それなら少人数でできるからな。」
「そうなんだ。」
「敵の立場で考えてみるといいよ。例えば5人しかいなかった場合、この隊列に突っ込んでも勝ち目は無いだろう?」
「そっか。確かに。」
「敵の立場に立って考えると、攻撃も読めるようになってくる。恐らく次に攻撃があるとすれば王都の外壁が目視できるようになった辺りだろう。こちらが油断するタイミングだ。」
「じゃあもうすぐ着くの?」
「あぁ、あと2キロも進めば外壁が見えるだろう。」
「凄い。そんなことも分かるんだ。」
「索敵を広げていると、人の分布で分かるんだよ。」
「ウィルは最大でどれくらいの距離の索敵が可能なんだ?」
「最大で50キロほどだな。魔力の消費が激しいし、意味もないから普段はそんなには広げない。普段は10キロかそれぐらいだな。」
「凄い。50キロも広げられるんだ。」
「だいたい1日の行軍で進める距離は最大で20キロ程度だからな。それ以上は広げてもあまり意味がない。
襲撃を受けるとか、何者かに追われている時でも20キロ広げれば十分だろう。」
「そっか。確かにそうかも。ただ広く広げればいいわけじゃないんだね。」
「そうだよ。広く広げれば魔力も消費するからね。シュペアは10キロくらいは広げられるんだろう?」
「うん。頑張れば25キロまで広げられるけど、寝る前とかじゃないと魔力切れになっちゃいそうで使えない。」
「そうか。シュペアは凄いな。普段はそんなに広げなくていい。常時広げておく場合は5キロまでで、たまに10キロまで広げて確認する程度でいい。」
「うん。分かった。」
「会話のレベルが高い・・・。
護衛騎士隊の魔術師では常時発動は2キロまでしかできないし、一日中も無理だ。途中で交代しないと魔力が持たない。」
「まぁ、普通の索敵を任される魔術師であれば、それが平均値だな。魔力が多い者や索敵が得意な者はコツを掴めば10キロくらいいけるようになる。
練習次第だな。私の中隊では索敵に力を入れた時期があって、その前の隊員の平均は1.5キロ程度だったが、今では平均5キロくらいだな。」
「そうなのか。コツを掴めば距離を広げられるようになるんだな。」
「あぁ、ただし向き不向きがあるから、全員が上手くいくわけではない。
上手くいかなくてもそれは仕方のないことだから、そこだけは間違えないでほしい。」
「分かった。魔術師を統括しているマージアが喜びそうだ。ウィルさん、ありがとう。
しかし、そんなことを他国の私たちに教えても良かったのか?」
「別にいいんじゃないか?ラジリエンはエトワーレと敵対しようと思っているわけじゃないんだろう?」
「敵対などしない!
兄上がそんなことを言おうものなら、俺が全力で止める!エトワーレの者は4人しか知らないが、俺は4人と友達だと思っている。
友が暮らす国と敵対などあり得ないことだ。
それに聞いている限り、エトワーレは穏やかで安全な国に思える。他国に攻め入るような国には思えない。
俺としては友好的な関係を築きたい。」
「私の一存では答えを出すことはできないが、今回のことがきっかけとなって、そんな関係が築けるといいと私も思っている。」
なんか大人な話みたい。
国と国が仲良くする。それっていいことだよね?そうなったらいいな。
カン、カン、カン、カン
「来たな。」
本当だ。王都の外壁が見える。
領主様の言った通りだ。凄い。
『このまま防戦しながら進むぞ!』
『『『はい!』』』
ヒィーン、ヒィーン
馬だって矢が飛んできたら怖いよね。
刺さったら痛いし。フロイは大丈夫かな?
「中隊長、フロイは大丈夫?」
「あぁ、結界を張ってあるから大丈夫だ。」
「そっか。それなら良かった。」
そのまま馬車は走り続けて、しばらく走ると王都の外門に着いた。
「フロイ、離れずにちゃんと付いてこいよ。」
ヒィーン<分かってる>
王都に入ると、馬車はスピードが落ちてゆっくり進んでいく。
そっか。人がいるからスピード出したら危ないもんね。
でも、無事に王都まで着けたんだ。良かった。
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