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115. 13日目、危機


僕たちがギルドから宿に戻ると、イスパーダが待っていた。


「シュペア、この街の街長が差し入れとしてフルーツを色々持ってきてくれたんだ。一緒に食べようよ〜」

「うん。」


フルーツは木の箱に色々な物が入っていて、見たことがない物が多かった。亀の甲羅みたいなやつとか、黄色い長いのが上で繋がってるやつとか。ベリーは見たことがある。



「お部屋で私が皮を剥いて切り分けましょう。」


モルさんもフルーツが好きなのか嬉しそう。


隊長さんも一緒にイスパーダの部屋に行って、ソファーで待っていると、モルさんがナイフで皮を剥いたり、小さく切ってくれた。

それを眺めていると僕は見つけた。


「あ!それ、パイン?」

「ええ、そうですよ。」


「凄い。切る前はこんな形してるんだ。知らなかった。上に草みたいなの生えてるんだね。」

「そうですね。はいどうぞ。」


「いいの?ありがとう。」


モルさんは切り分けていたパインを一欠片僕にくれた。

僕はそのパインを口に入れて噛むと、繊維の間からジュワーって出てくる甘くて酸っぱくて・・・苦い・・?


急に眩暈がした。



バターン


「シュペア!?」



これはきっと毒だ。異物排除を・・魔力を集められない。無理かも・・・

僕、死ぬの?領主様、僕、約束守れないみたい・・・ごめんなさい。





-----

>>>ルシカ視点


宿に戻ると、イスパーダ様が街長から差し入れられたフルーツを一緒に食べようと誘ってくれた。

ベリー以外は見たことのないものばかりで、それは本当に食べれるのかと疑われるような見た目のものもあった。


イスパーダ様の部屋にいくと、執事が皮を剥いて切り分けていく。

シュペアはそれを楽しそうに眺めている。


「あ!それ、パイン?」

「ええ、そうですよ。」



シュペアはパインが好きで、昨日もパインが食べたいと言っていたし、ポルキロという好きなものを好きなだけとって食べられる昼食の時にはいつもパインを乗せている。


執事が切り分けた一欠片をシュペアに渡すと、嬉しそうに口に入れた。

次の瞬間、


バターン


「シュペア!?」


シュペアは倒れた。



「シュペア!!」


「毒か!?」

「誰か解毒剤を!!」


「は、はい!」


一瞬で緊迫した空気に変わり、俺はどうしていいのか分からず立ち尽くした。

ゲオーグがシュペアを抱き抱えてソファーに寝かせ、シュペアの名前を呼ぶ。


「シュペア、シュペア、シュペア、シュペア」


「解毒剤はまだか!!」

「申し訳ございません。私が先に毒味をするべきでした。」


「その話は後だ!

治癒が使える魔術師を呼べ!

ポーションも持ってこい!」


俺はシュペアの横に膝をついた。

「シュペア・・・」


その唇は紫に染まり、顔は真っ青に血の気が引いている。


「解毒剤です!」

「早く飲ませろ!」


何もできないことが情けなくて悔しい。

こんな姿のシュペアは見たことがない。



こんなの嘘だ。嘘だと言ってくれ。

頼む・・・死なないでくれ。

ゲオーグを見ると、目に涙を浮かべて、神に祈りを捧げていた。



「治癒魔術が使えます!」

「シュペアに治癒魔術を!」

「はい!」


俺らは退かされて、魔術師が治癒魔術をかけ始めた。


俺も、神に祈るくらいしか、できることがない。

どうか、シュペアを連れて行かないでくれ。お願いだ。


治癒魔術はかなり魔力を使うらしく、何人か交代しながらかけていたが、もう魔力がなくてかけられないと・・・。

そんな・・・。



そうだ!中隊長!あの人なら。


「ゲオーグ!ギルドに頼んで中隊長に連絡を入れて貰うぞ。緊急依頼として依頼すれば、もしかしたら!何か助かる方法が見つかるかもしれない!」

「分かった。すぐに行こう!」


俺らはギルドへ走った。

ギルドに入ると受付に緊急依頼を頼んだ。


「すぐにSランクのウィルに連絡を!

『シュペアが毒を、解毒剤を飲ませたが起きない』と、すぐに連絡を入れてくれ。

緊急依頼としてすぐに受けてくれ、金ならある。希望額を出す!」


「落ち着いてください。連絡はしてみますが、すぐに確認されるかは分かりません。」

「それでもいい。とにかく急いでくれ。頼む!」

「一刻を争う、頼む・・・。」

「か、かしこまりました。連絡はしてみます。」


「ルシカ、ここで待とう。俺らが冷静にならなければ。」

「そ、そうだな。」


ゲオーグに泣きながらそう言われて、やっと息をすることができた気がした。



閲覧ありがとうございます。

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