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108. 6日目 1/2


「何も無いのはいいことだけど、少し退屈だね。宿に着いたら、中庭で模擬戦させてもらえないかな?」

「いいんじゃない?安全が確認できたら、みんなで模擬戦しよう。

気を抜いていいわけじゃないが、ずっと気を張り詰めたままでは疲れるからね〜。

まだ先は長い、たまには発散することも必要だろう。」


「イスパーダありがとう。イスパーダは大丈夫?疲れてない?」

「大丈夫だよ〜

心配してくれるなんて優しいね〜

シュペアがいてくれるから心強いし、色んな話を聞かせてくれるしいつもより楽しい。」


「そっか。それなら良かった。」


今日も何も起きないといいな。

たまにはちょっと戦いたいと思うけど、護衛するなら何もない方がいい。


今日も、イーグルが2回飛んできたけど、それだけだった。




いつものように冒険者ギルドに寄って、この辺りの魔獣の情報を聞いて、中隊長に伝言を残した。


この後、安全なら模擬戦だ。

ずっと馬車に乗ってるのは、走って移動するよりも大変だったから、久しぶりに体を動かせるのは嬉しいな。

そんなことを考えながら街中を歩いて宿に向かった。



部屋に入ると今日も、感情も確認できる索敵を広げる。宿の周辺には変な人はいないみたい。


あ・・・街の端に真っ赤な人たちが集まってるのが確認できた。

これが、盗賊とかの悪い人なのか、それともイスパーダを狙ってる人なのかは分からない。


「ルシカ、ゲオーグ、あのね・・・

この宿の中と、その周りには悪い人はいないんだけど、街の西に悪い感情の人がたくさん集まってるところがある。

でも、イスパーダを狙ってる人たちなのか、関係ない盗賊とかの悪い人なのか分からない。

僕、どうすればいい?」


「イスパーダ様とアセロ隊長に相談しに行こう。確認をしに行くにしても、様子を見るにしても、伝えておいた方がいい。」

「そうだな。一緒に行こう。」

「うん。」


「隊長さん、イスパーダ様も一緒に相談したいことがあります。できれば早めに話せますか?」

<イスパーダ様に確認を取るからちょっと待っていてくれ。>


魔獣討伐は、魔獣を探すのも楽しいし、倒し方を考えたり戦うのも楽しい。

でも、襲撃犯は探すのも怖いし、前に立つのも、倒す方法を考えるのも、戦うのも怖い。

これが、Bランク冒険者の試験は僕にはまだ早いって言われた理由なのかもしれない。



窓に近づいて空を見たら星が出てた。

戦場って、どんな感じなんだろう?毎日襲撃があるみたいな、いつも襲撃犯と戦ってるみたいな感じなのかな?

あんなに強くて優しい領主様が味も表情も失くすくらい辛い場所。

大人になったら、平気になるのかな?

でも、ゲオーグも辛いって言ってたから、人を相手にするのは、大人でも辛くなることなんだ。


でも、僕は護衛だから、逃げたらダメだ。

領主様の側近になるなら、ちゃんと乗り越えなきゃいけない。



<シュペア、イスパーダ様の許可が取れた。今からイスパーダ様の部屋に来てほしい。>

「分かった。」


「ルシカ、ゲオーグ、イスパーダの部屋に行こう。」

「あぁ。」

「シュペア、みんなついてるから大丈夫だからな。」


「うん。ゲオーグ、ありがとう。」



コンコン

「シュペアとルシカとゲオーグです。」

「入ってくれ。」


僕たちが部屋に入ると、イスパーダと隊長さんと執事のモルさんがいた。


「お席にどうぞ。」

モルさんがソファーを勧めてくれたから、僕たちは並んで座った。


「シュペア、さっそくだが相談とはなんだ?」

「えっと・・・。」


僕は少し怖くなって、ルシカとゲオーグを見た。



「俺が代わりに話そう。

シュペアがいつもの索敵を使ったら、宿と宿周辺には悪い気配は無かったそうだ。

しかし、街の西の端に悪い人が大勢いたそうだ。

それがイスパーダ様を狙っている奴らなのか、盗賊やなんかのアジトでイスパーダ様の襲撃とは関係ない奴らなのかが判断できない。それで相談したいと申し出た。」


ルシカが僕の代わりに話してくれた。


「なるほど。それは悩むところだな・・・。」

「シュペア、大勢とは何人くらいか分かるか?」

「さっきは20人くらいだった。」

「そうか・・・。」


イスパーダと隊長さんが難しい顔をして悩んでる。



「襲撃が起きるタイミングとしては、今夜というのも可能性としてはありますね。

出発から6日目で、騎士たちの緊張が緩みやすい時期ですし。念のためイスパーダ様は宿を変えましょう。」

「分かった。」


いつも周りの話を静かに聞いている執事のモルさんがお話に入ってくるのは珍しい。

モルさんはいつもイスパーダと一緒にいて護衛騎士のみんなと同じように、イスパーダのこと守ってきたんだと思う。


それに、分かったって言ったイスパーダの声は、いつもより元気がなかった。


ダメだ、僕はもっとちゃんとしなきゃ。イスパーダのこと守るって約束したんだもん。

1番怖いのは僕じゃない。イスパーダが1番怖くて不安なんだ。

イスパーダは何度も命を狙われたって言ってた。こんなに怖い思いをいつもしてたの?



「隊長さん、この街の地図はある?」

「大まかな地図ならあるぞ。ほら。」


隊長さんは胸ポケットから折り畳まれた紙を出してテーブルに置いた。


僕は怖かったけど、もう一度索敵を広げた。


「ここ、この辺りにいる。数は21人。

まだ動いてない。この人たちがいる建物はどんなところか分かる?」


僕は悪い人が集まってる場所を指差した。


「ありがとう。この辺りはスラムだから詳しくは分からないな。偵察を向かわせよう。

シュペア、ルシカ、ゲオーグ、イスパーダ様を頼む。私は襲撃に備えて騎士たちの体制を整える。」

「うん。移動したらまた連絡するね。」

「助かる。」


隊長さんは急いで部屋を出て行った。


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