103. 打ち合わせ
今日も護衛騎士隊の食堂のお昼はポルキロだった。
でも、並んでる料理は違うものもあって、その日によって内容は変わるみたい。この、自分だけのご飯セットを作るの楽しい。
お皿に好きな物を乗せてご飯セットを作って席に座ると、イスパーダが食堂に来た。
「シュペア、さっきのあれ何?実はシュペアが部屋に隠れてるのかと思って探しちゃったよ。」
「声に魔力を纏わせて、ここからイスパーダのところに届けたんだよ。」
「そんなことができるのか。さすがだな。」
「イスパーダは今日もここでご飯食べるの?」
「あぁ、もちろん。」
イスパーダが僕の隣に座ると、執事の人がイスパーダのご飯を持ってきた。
「この後、王都への移動の打合せをしたい。各隊長と、シュペア、ゲオーグ、ルシカは参加して欲しい。アセロは各隊長に伝達を頼む。」
「畏まりました。」
「僕も参加していいの?」
「いいぞ。」
「シュペアは今日は何を練習したんだ?」
「昨日の復習と、ターゲット設定かな。あと、みんなに結界を教えてた。危ないことはしてないよ。」
「そうか〜、ありがとう。
マージア、結界を教わったのか?どうだった?」
「今日は、範囲結界と自分を含めた隣の者に結界をかける方法を教えてもらいましたが、まだ私たちは実力不足で再現できておりません。」
「ん?今日は?」
「はい。昨日は魔力循環の重要性と魔力暴走の止め方を教えていただきました。」
「魔力暴走は止められるのか。シュペア、色々教えてくれてありがとう。」
「うん。」
イスパーダは僕の頭を撫でてくれた。
ご飯を食べてしばらくすると、王都への移動の打合せをするために別の部屋に集まった。
なんだか僕も大人になったみたいで嬉しい。
「何事もなければ、明日出発しようと思う。」
「「「はい!」」」
護衛騎士隊だけで馬車8台にそれぞれ8名プラス御者、騎馬が30、それにイスパーダと執事の人の馬車、食料などを積んだ荷馬車が1台にその御者1名。
全部で10台の馬車で周りを騎馬で囲んでの移動になるって説明を受けた。
僕とルシカとゲオーグは、イスパーダと同じ馬車に乗ることになった。執事の人と、隊長さんも一緒に乗る。
馬車の並び順は護衛騎士の4台、イスパーダの馬車、荷馬車、その後ろに護衛騎士の4台が続く。
商人の護衛はしたことがあるけど、こんなに大人数で移動するのは初めて。
王族って移動するだけで大変なんだ。
護衛中の対応は、指揮は隊長さんが取る。
道は馬車で行くから、街道を最短距離で進む。
泊まるのは出来るだけ街の宿を使って、次の街にたどり着けない場合は野営をする。
1番前と1番後ろの馬車に乗ってる魔術師が交代で常時索敵を使って警戒をして、魔獣が出たら、馬車を止めて交戦する。
襲撃の場合も、馬車を止めて交戦する。襲撃の場合は、イスパーダの馬車を護衛騎士全員で囲んで敵を通さないようにするみたい。
襲撃の敵は、連れて行かずにその場で処刑して埋葬する。
護衛騎士に怪我人や死者が出た場合は、怪我人は連れて行くけど死者はその場で埋葬するって。
誰も、死なないでほしい・・・。
怪我も重症なら、次の街で下車する。
人数が減ったら、馬車も街に置いていく。
もう馬車で進めないような状態になったら、僕たちと隊長さんがイスパーダを連れて逃げることになってるけど、これだけたくさんの護衛騎士が付いているから大丈夫だと思う。
最後に僕が提案して、隊長さんたちに、声に魔力を纏わせる方法を教えることになった。
隊長さんとマージアさんはしばらく練習すると出来るようになったけど、戦士の分隊長さんたちは苦戦してた。
イスパーダもやりたいって言って練習して、すぐできるようになった。
あとは自分たちで練習して腕を磨くって。
僕は、人がいつか死ぬってことは知ってるし、村でも死んじゃった人はいた。
でも、処刑とか埋葬するって話が少し怖くて、不安になった。
「シュペア、大丈夫か?」
「俺たちが付いてるから大丈夫だからな。」
「うん・・・。」
「やはりシュペアに話を聞かせるのは早かったか。まだ成人前の子供だしな。
ルシカとゲオーグだけ参加してもらって、後で概要だけシュペアに伝えて貰えばよかったな。」
「僕は部屋で少し休みます。」
「分かった。俺が部屋まで送っていこう。」
僕はイスパーダと一緒に部屋に向かうと、自分に癒しの魔術をかけて、ベッドに入って少し寝た。
少し寝て起きると、窓の外は真っ赤な夕陽が眩しかった。