93 復活のR-2号www
「そうか。ただただ『飲みたい』だけであたしの皇帝就任祝いではないのか」
何だか落ち込んでいる感じのエリス。普通なら励ますべきところだと思う。だけど、周囲がエリスの皇帝だということを厨二ネタだと思ってくれていた方が都合がいいしなあ。
それに「皇帝就任祝い」が駅前の居酒屋ってセコすぎないか。
などと言うこと方を考えていたら、不意に前方から声がした。
「あー、今回はお祝いだから、あたしの彼ピもみんなに紹介しちゃおう」
え? ねこや先生。そっ、それは?
「アールニゴウさーん。飛んできてえー」
あわわわ。何てこと言い出すんですか。ねこや先生。あ、老谷じいちゃん以外の人から提供されたカップ酒飲んでる! そりゃあ今は今は勤務時間外だから成人女性が飲むことは問題ないって言えば問題ないですが。
ざわっ
ねこや先生の「彼ピ呼ぶ」発言に周囲はざわめくが、肝心のR-2号は飛んでこない。
ふうっ
僕は一息吐く。先のことは分からないけど、今んところR-2号はねこや先生が望んでいるだけで、ねこや先生の「彼ピ」じゃないもんね。エリスの護衛ってだけで。
居酒屋に向かう集団も一時ざわついたけど、酔っ払ったお姉さんのお惚気ギャグということで落ち着いたようだ。
「いやー、お姉さん彼ピにラヴだねえ」
「こんなかーいい彼女持った彼ピが
などと言われているし。
取りあえず今回は大事にならなくて良かった。
そう僕は思った。その時までは。
だけど、その平穏はすぐに破られた。
「何だ? にゃんこ先生。R-2号さんに会いたいのか? おーい、R-2号さん、すぐに『飛んでくる』のだっ!」
わあっ、エリスッ! やめいっ! やめいっ!
◇◇◇
待て待て待てっ! 慌てるなっ!
今までの経験からもエリスが呼んだからといって、必ずしもR-2号が「飛んでくる」かどうかは分からない。「飛んでくる」のはエリスからそう離れていないところにいた時だけだ。
しかもR-2号は校長先生から高校の校務員にどうかという誘いを受けているものの今のところは収入ナシ。
どこか遠くで小銭稼ぎに勤しんでいてくれている可能性も高い。
どうかエリスの声が聞こえないところにいてくれっ!
そんな僕の願いも空しく、ある音楽が聞こえてきた。
ちゃちゃっちゃんちゃちゃっちゃん ちゃちゃっちゃんちゃちゃっちゃん
ちゃちゃっちゃんちゃちゃっちゃん ちゃちゃっちゃんちゃちゃっちゃん
ちゃちゃちゃちゃっちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ
あーっ、R-2号のテーマソングだあっ!
◇◇◇
ばびゅーん
R-2号はやっぱり「飛んできた」。ものの例えではなく本当に「飛んできた」。
ざわざわざわ
そのざわめきは痛車仕様のトラクターやウェディングドレス姿の女子高生出現のそれを超えていた。そりゃそうだよね。はあ。




