87 バーニングトラクターアンドバーニング俺w
「オッ、オッ、オキムネェェェェェェッ! おっ、おっ、おっ、おまえってやつあああ」
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ
一瞬、何が起こったのか分からなかったが、あっ!
「はい。『送信』と」
わっ、わっ、わっ、サダヨシッ! おまえ今何をしたっ?
「ふっふっふ、こんばんは。ミスターリア充。オキムネと絵栗鼠ちゃんがいちゃついている姿の証拠写真はオキムネのご両親に送信させてもらったよ」
何いいっ。うちの両親にぃ! それマジ?
「マジもマジ。大マジ。『本気』と書いて『マジ』と読む」
サダヨシ、おまえなあ、人には肖像権ってもんがあるんだから、勝手に写真撮っちゃいけないんだぞ。コミケでコスプレしている人にも必ず許可取ってから撮影するだろうが。おいっ、エリスも何か言えっ!
「かーわいい。ウェディングドレス似合っているよー」
「犬咲、やってくれるじゃん。初日から絵栗鼠にウェディングドレスを着せてくれるとは」
「ふふん。絵栗鼠ちゃんが自分でウェディングドレス着たいと言ったわんよ。凄い逸材を紹介してくれてありがとうわん。鵜鷺先生」
何かもう犬咲店長、琴理さんに加えて、鵜鷺先生、ねこや先生もエリスを囲んで大騒ぎ状態。
「うっ、ううっ」
わ、来ていたの、老谷のばあちゃん、しかも涙ぐんでいるし。
「老谷家には男の子ばかり三人もいるけど、全員、じいちゃんの薫陶を受けて、見事なオタクに育って、花嫁さんの姿なんか一生見られないと思っていたら、絵栗鼠ちゃんが見せてくれて、これでいい冥土の土産が出来たよ」
「老谷さーん」
老谷のばあちゃんの肩に優しく手を置く犬咲店長。
「そんなこと言わないで長生きしてくださいよー。絵栗鼠ちゃんはねえ。これからも大活躍してくれますから」
何かいい話みたいになっているけど。このままでいいのか?
◇◇◇
わっ、スマホがブルった。誰からだ? わっ、母さんっ! すげえ出たくないけど、出ないわけにもいかないし……
「オ・キ・ム・ネーッ!」
受けるや否や凄まじい声が聞こえてきた。
「サダヨシくんから送られてきた写真見て、もうドビックリよおっ! 親に何の断りもなく、『披露宴』やるとはどういうつもりっ?」
いやいやいや、サダヨシが送った写真はですね。『披露宴』でも何でもなくて、ただのコスプレでしてね。
「言い訳無用!!」
いえ、言い訳ではなくて事実を言っているので……
「『披露宴』に親が出席しないわけにはまいりません。既にお父さんは礼服に着替えて、出発しました」
ええっ? お父さんがもう先に向かっているの?
「ええ。もうあたしたち家族の次に大事にしているポルボルギーニのトラクター。『魔法少女ラブラブ愛凜の痛車仕様で出かけていきました。お父さんの大好きな『バーニングトラクター アンド バーニング俺』と『ラブラブ愛凜』のオープニングテーマを流しながらね』
すみません。何だか気が遠くなってきました。




