8 勅命の乱発は革命を招きますw
「あたしの参謀総長になるのは嫌なのか?」
わーっ、分かったっ! 分かったっ! やるっ! やりますっ! 参謀総長やりますっ!
途端に絵栗鼠は満面の笑み。ころころ表情が変わるなあ。そこがまた可愛い。って、おっとっと、ほだされてはいかん。
絵栗鼠は満面の笑みのまま、
「よし参謀総長。皇帝の勅命だ。地球ケンタウリ帝国を建国せよ」
何それ? いろいろはしょり過ぎでしょう。つーか「参謀総長」と言うのなら、他の「参謀」はどこにいるのよ?
「ええいっ! 参謀総長なら自分で見つけてこいっ! これも勅命だっ!」
よーするに「丸投げ」ってやつですね。
◇◇◇
それもあるけど、そもそもこの家不法侵入状態でしょう。そもそもそっちの方が問題ですよ。
「ぬぬぬっ! 帝国軍が占領して何が悪い?」
おまわりさん来るよ。いきなり拳銃を乱射はしないだろうけど。
「むっ、むむむ。何とかせよ。勅命だ」
勅命乱発し過ぎでしょう。革命起こるよ。
◇◇◇
♪じゃじゃじゃじゃーん じゃじゃじゃじゃーん
ベートーベン交響曲第5番「運命」。何だ何だメタルヒーローズ。ここでこの選曲は?
膝から崩れ落ち、頭を抱える絵栗鼠。
どう見ても「演技」じゃなくて「素」なのは喜ぶべきか悲しむべきか。
「なっ、なんてこった。おまわりさんが来るのか……」
何か異様におまわりさん怖がるけど何かあったの?
「いやこの参考文献にそう書かれているぞ」
指差したのは、もともと住んでいた老谷さんが残して行ったマンガ本の数々。
うーむ。老谷のじーちゃん。齢に似合わぬオタクだったからなあ。
◇◇◇
「オッ、オキムネッ! 何とかしろっ! いやっ! してくださいっ!」
今までの上目遣いに加えて涙目。やめろーっ! そういうのには弱い。「皇帝」とか言っても普通の女の子っぽいし、くっそー。
分かったっ! 分かりました! もともと老谷さんの家の周りの畑は、隣家であるうちの親父が借りて耕作するって話になっていたし……
この家も借りられないか頼んでみよう。でも、実際に借りるのは皇帝陛下なんだからちゃんと礼儀正しく挨拶してもらわないと。頭も下げるんだよ。
「なっ、『皇帝』であるあたしが人に頭を下げるのかー」
それちゃんと出来ないとおまわりさん来るよ。
「くっ、くくっ、やっ、やむを得まい……」
首尾よく借りられたとしてだ。この家古いし、老谷さん優しいからそんなに高い家賃取らないだろうけど、タダってわけにはいかないだろうし。電気料、水道料、プロパンガス代は自己負担だし、お金あるの?
「やちん? でんきりょう? すいどうりょう? ぷろぱんがす? 何だそれは?」
おまわりさんは知ってて、そっちは知らないんかいっ!
 




