79 スリスリは二人きりの時にw
まあとにかく行ってみることにしますか。事前に何かの心配したところで妙なことが起きるのはもはや定番だし。
「じゃあ駅前の下総屋に行ってくれる。犬咲が事務室で待っているって」
はい。鵜鷺先生、いろいろありがとうございます。ほら、エリスもお礼言って。
「ピョンちゃん先生、ありがとうなのだ。スリスリ」
わっ、エリスッ! 僕の胸板をスリスリするなっ!
「いやしばらくやってなかったから。スリスリ」
鵜鷺先生、苦笑い。
「剣汰瓜さん、『ピョンちゃん』と呼ぶのはやめなさい。それからそのスリスリは人前ではやらないでね」
「だけど、先生」
エリス、不満そう。
「ほっぺたにガーゼを付けられてしまったので、これではスリスリできないのだ。スリスリをどんどんしないとオキムネの金塊が手に入らないのだ」
「じゃあねえ」
鵜鷺先生、少し考えてから。
「他が犬咲一人の時ならどんどんやっていいよ。犬咲、そういうの大好きだからね。後は新田君と二人きりで部屋にいる時にね」
「分かったのだ。先生。頑張るのだ」
鵜鷺先生、笑顔。しかし、バイト先の店長さんは女子高生が男子高生の胸板をスリスリするのを見るのが大好きなんですか? それに先生が女子高生に男子高生と部屋で二人きりの時はスリスリしていいってちょっと違いません?
◇◇◇
ともあれ出かけるとしましょうか。生活費稼がなけりゃならないしねっと、わあっ、エリス僕の右腕を取ってピタって体くっつけてきた。
「なかなかスリスリ出来ない以上、こうせねば。オキムネの金塊は手に入らない」
いやでもこれでアルバイトできれば、バイト代が入るよ。僕の「金塊」がなくても生活できるんじゃあ・
「そうはいかんっ!」
エリスの僕の右腕を引っ張る力が一気に強まる。わあっ。
「それはそれ。これはこれ。オキムネの『金塊』はあたしのもの。誰にも譲れんっ!」
その言葉、どう解釈したもんでしょう。
◇◇◇
かくて校舎から校庭を経て、バス停に向かうまでの間、エリスはスリスリこそはしないものの体くっつけたまま。
もちろん周囲は大騒ぎ。
「やるわねえ」
「三日前に入ってきた新入生のカップルでしょう?」
「あてられちゃうね」
「教室でお弁当を『あーん』して食べさせていたって」
「何そのリア充」
うーん。これはなかなか慣れんわ。みなさんもう興味津々って感じ。などと言ってるバスが来たぞ。
エリスはくっついたままだけど運転士さんは動ぜず。見事なプロ根性。感服します。というかこういうの他にもいるんですかね。
「お客さーん。もう発車するから早く座ってください。危ないですよー」
あ、どうもすみません。それにしても昨日も駅前行ったようなあ。はて駅前には下総屋の他にも何かあったような気がしたけど。何だっけ?




