78 鵜鷺先生はノリノリだw
しかし、エリスは神妙な顔。どうしたというのだ?
「オキムネ・・・・・・」
むう、柄にもないぞ。その顔。
「『高貴』なる『皇帝』である絵栗鼠が『労働』などをやってよいものだろうか」
何を今更、「高貴」とか言いながら今朝我が家でご飯と味噌汁盛っていたじゃないか。
「あ、そうか。そう言えばそうだな」
そうそう自分じゃどう思っているかは知らないが、エリスのことを本気で「高貴」だと思っているのはメタルヒーローズだけだと思うぞ。僕にもあんまりそういう認識ないし・・・・・・
「何だかよく分からんが、あたしは『労働』やっていいってことだな」
エリスが『労働』出来るかどうか分からないけど、やってみないことには何も分からないし、生活費稼がなきゃいけないってのもあるし・・・・・・
◇◇◇
「はいはい、それじゃあ、いちゃつきはもういいかな? これから鵜鷺先生から犬咲に電話するからね」
鵜鷺先生、言うが早いかスマホを取る。
「あ、犬咲? 鵜鷺だけどさあ、以前、犬咲の店で『高校生アルバイト募集』の貼り紙あったじゃん。あれまだやってるよね?」
鵜鷺先生も結構下総屋出入りしてたのね。どこかで会っていたりして。だけどこれからは下総屋のR18コミックのコーナーを通り過ぎるふりして横目で凝視することもやりにくくなるなあ。おっと。
「え? バイト希望の子、どんな子かって? もう任せてちょうだいよ。半端ない『厨二』だから。鵜鷺先生なんてもんじゃないよ。ねこやに勝るとも劣らない資質の子たちよ。会って驚くなよー。むふふ」
ねこや先生に勝るとも劣らない資質の子たち? それって僕も入っているってことですかあ?
「ああもう犬咲も趣味趣向全開で接していいから。じゃあこれから下総屋に向かわせるから。うんうん。分かった。言っとく」
通話を終えた鵜鷺先生、笑顔で僕たちを見る。
「犬咲ね、あなたたちに期待しているって。履歴書書いてもらって、簡単な面接はするけど即戦力にしたいって。あ、これは学校に出す『アルバイト許可申請書』ね。下総屋の住所とか鵜鷺先生の方で書いておいたから、採用が決まったら鵜鷺先生に出して」
鵜鷺先生ノリノリですね。で、エリスもぼくも一体何の「即戦力」として捉えられているんですか? 「仕事」で、ですよねえ。まさか「オタク談義」の「即戦力」として捉えられているわけじゃないですよね。
「わかるよ。新田君。初めてのアルバイトは不安だよね。でも大丈夫。行っておいで」
依然として笑顔の鵜鷺先生。
「はっはっは、そう心配するなオキムネ。『皇帝』の絵栗鼠がついているぞ」
いや、エリス、さっきまで「皇帝」は「高貴」だから労働は出来ないかもと言ってなかったか?




