69 新キャラはやはり変人なのだっW
「ねこや先生」
あ、見えた。小柄で眼鏡をかけ、何とも言えない笑顔を見せている妙齢の女性。あれは、あれはっ!
入学式で見た校長先生だっ!
「ねこやせんせーい。『証拠隠滅』って何かしら~? 説明してくれな~い」
さすがのねこや先生も固まった。答えを返せずにいる。だけど、これは他人事じゃないぞ。何しろ窓ガラスを割ったのは部外者のR-2号だし、R-2号はエリスの護衛用アンドロイドだし、絶対話はこっちまで来るよなあ。やれやれ。
「すっ、すみません。校長先生」
先に我に返ったのは鵜鷺先生だった。
「窓ガラスを割ったのは私のクラスの剣汰瓜さんと同居されている親族の男性です。海外から来日したばかりだそうで」
「生徒の親族とは言え、部外者の男性が学校の窓ガラスを割ったというのは問題ね。暴力沙汰があったと思われても仕方ない」
「いっ、いえ」
ねこや先生、ここでやっと我に返る。
「ねこや先生が剣汰瓜さんの頬の治療をした時に痛がったのを聞いて慌てちゃったそうです。ここにいる全員がアールニゴウさんから暴力や脅迫は受けていないです」
「親族の剣汰瓜さんが治療を痛がったという理由で窓ガラスを割るのー?」
はい。普通そう思いますよね。僕だって裏事情を知らなければそう思いますよ。校長先生。
はあ、どうしよう。ところでエリス。暇を持て余して僕の背中にスリスリしてるんじゃない。エリスの問題なのよ。これ。
◇◇◇
重苦しい空気が漂うと思われた次の瞬間……
「!」
ふとR-2号を見た校長先生が雷に打たれたように一瞬固まった。
「こ、これは……」
なっ、何だ何だ? まさか校長先生も僕と同じでR-2号のメタルボディを見抜く力があるとか。
「ちょっ、ちょっとあなた。新入生よね。名前は?」
はっ、はあ、新田です。
「新田君ね。ちょっとこのR-2号の前に立ってみて、あ、あなたはごめんね。ちょっと避けていてくれる」
校長先生はスリスリしていたエリスを引き離すと僕をR-2号の前に立たせた。エリスは不満顔だけど、校長先生は気にしてないぞ。うーむ。
「はい。それでR-2号は後ろから新田君に両腕を回して。うんうん。いいわねえ。いいわねえ」
何だか雲行きが怪しくなってきたぞ。比較的まともな鵜鷺先生はもちろん、変人指数の高いねこや先生やエリスまで呆然として事態を見守っている。
「いいわあ、断然、インスピレーションが湧いてきちゃったね。ちょっとじっとしててね。いいわあ。いいわあ」
校長先生。おもむろにバッグからスケッチブックを取り出すとサラサラと描き始めた。何なのよもう。




