61 ピョンちゃん先生、エリスを説得するw
ねこや先生、R-2号の背中にしがみつくとスリスリを再開。
「うぬう、先生、やるなっ! 負けないぞっ! スリスリスリスリ」
「何のっ! 絵栗鼠ちゃん。負けないよっ! スリスリスリスリ」
相変わらず無表情のR-2号。生身で思春期の僕は懸命に耐える。そして、呆然としている鵜鷺先生。
僕は鵜鷺先生にアイコンタクト。今のうちに。頷く鵜鷺先生。良かった。鵜鷺先生はねこや先生よりは変人指数が低い。命名の由来という地雷さえ踏まなければ大丈夫そう。
「じゃ、じゃあ、ねこや。私、この住民票出してくるね」
「ふっ、ふん。ピョンちゃん。あたしが羨ましい?」
「ああ、羨ましい羨ましい。じゃあまた新田君と剣汰瓜さんを迎えに来るからね」
「わーい。羨ましいって、マイダーリン」
かくて鵜鷺先生が住民票を渡して帰ってくるまでの間、ねこや先生とエリスはスリスリを続けた。うーむ。二人ともげんきだなあ。
◇◇◇
「まだスリスリしてたの? 好きねえ。ねこや」
もうあきれ果てたという顔の鵜鷺先生。
「羨ましーい? ピョンちゃん」
「はいはい。羨ましい。でもそろそろ社会復帰してもらわないとね。まずは剣汰瓜さん。まだ高校生なんだし、人前で新田君の背中に全身スリスリはまずいわ」
「しっ、しかしだな。ピョンちゃん先生。あたしはオキムネの『金塊』を手に入れねばならんのだ。そのためには『恋人』にならねばならんのだ。そのためにはスリスリせねばならんだ」
「えっ、えーと」
鵜鷺先生、目が点。
「とっ、取りあえず剣汰瓜さんがかなり重度の厨二ということだけは分かったけど。ここは何と言ったものかな」
鵜鷺先生、二十五歳というお話でしたが、柔軟な方で助かります。ここは僕が助け舟を出しましょう。
エリス、その全身スリスリを人前でやるとおまわりさんが来るのだ。
「なっ、何っ? おまわりさんが来るっ?」
すぐに硬直して、スリスリが止まるエリス。よしっ、たたみかけろっ!
鵜鷺先生、人前で全身スリスリしてるとおまわりさん来ますよね。
「え? え? え? ええ」
鵜鷺先生、さすがに初めは当惑したけど、すぐに頷いてくれる。ふう。
「剣汰瓜さん。新田君の言うとおり、人前で全身スリスリしてるとおまわりさんに捕まります。補導されます」
「なっ、なっ、なっ、なんとおっ!」
その場で崩れ落ちるエリス。
「ならばっ! ならばっ! あたしはどうすればいいのだっ!」
鵜鷺先生、優しく後ろからエリスの肩をたたく。
「ガッカリしない。ガッカリしない。まだ高校生なんだから、ゆっくり仲良くなればいいの。方法はたくさんあるんだから」
スリスリスリスリスリスリスリスリ
この状況下にあって、R-2号の背中に全身スリスリを続けるねこや先生。うーん。鋼メンタル。




