60 死闘! 「ネコ対ウサギ」w
「ねこやが自分の名前を気にしているのは分かるけど、校長先生も事務職員さんもねこやの本名を言いふらそうと思ってるんじゃないよ。これ以上困らせないで住民票出してあげたら」
鵜鷺先生、正論で行きます。
「いーえっ、マイネーム イズ ニアン・ネコヤ。マイネーム イズ ナット サダコーッ! なのよ。ピョンちゃん」
ねこや先生、強情。
「はいはい。あんたは猫屋新杏。住民票もらっていくよ」
「そんなあ、ピョンちゃん。あたしを捨てると言うの。この遊び人。このヤリマン。プレイガールピョンちゃん」
「プレイガールって、あんた何時代の人よ。大体あんたがそうやって『ピョンちゃん。ピョンちゃん』言うもんだから、生徒たちが真似して困ってんよ」
「何よー。『ピョンちゃん』いいじゃない。大体、ピョンちゃんだって、お父さんが歌手の宇多田ヒカルさんと『デ・ジ・キャラット』のうさだヒカルの熱狂的ファンで『光』って命名されたんでしょ」
「ねこや。あんた、今ここでそれ言う? 新田君と剣汰瓜さんがいるとこで?」
「あー、思い出すわー。小六の授業参観。ピョンちゃんのお父さんが得意満面の顔で『うちの娘は歌手の宇多田ヒカルさんと『デ・ジ・キャラット』のうさだヒカルから『光』ってつけたんですよー』って」
「ギャアアアアア」
わあっ、鵜鷺先生、叫び声を上げつつ、鬼気迫る表情でねこや先生につかみかかった。鵜鷺先生は冷静な人だと思ってたけど、凄い迫力!?
「生徒たちの前でそれを言うな―っ! この貞子! 貞子! 貞子!」
「ギャアアアアア」
今度はねこや先生が叫び声を上げる。
「何だとこのー。宇多田ヒカル。うさだヒカル。宇多田ヒカル。うさだヒカル。宇多田ヒカル。うさだヒカル」
うーむ。ネコとウサギ。これにイヌを加えれば、可愛らしいペットトリオだが、今繰り広げられてるのは地獄絵図だ。
スリスリスリスリスリスリスリスリ
あっ、エリス。まだスリスリ続けてたのか。とか言ってる場合じゃないぞ。何とか止めないと保険室が全壊しかねない。
僕は手近な紙にメモを取り、R-2号に渡す。これを順番に読むのだ。R-2号。
「エートナニナニ。猫屋新杏サン」
ピタ
ねこや先生は止まった。あんまり急に止まったので鵜鷺先生のパンチを顔面にもう一発喰らったがともかく止まった。
「猫屋新杏サン。住民票ノ名前ガナンダロウガ。アナタハ猫屋新杏サンダ」
「んまあああ」
ねこや先生大興奮。さっきの鵜鷺先生のパンチも相まって、左の鼻の穴から鼻血が。
「分かって。分かってくれるのね。さすがはあたしの彼ピ」
 




