55 メインヒロイン忘れられるact2w
「痛いのだっ! 痛いのだっ! 痛いのだーっ! 早く何とかしてもらいたいのだっ!」
エリス、大騒ぎ。まあ、確かにすり傷の治療が中途半端なのはいかん。しかし、ねこや先生の視線は、R-2号の方に釘付けのままだし。これは……
R-2号っ! 主君のエリスが痛がってるぞ。ねこや先生に治療を再開してもらってくれ。
「ウッ、ア、分カッタ。先生、絵栗鼠様ヲ助ケテ……」
「絵栗鼠様? アールニゴウさん、絵栗鼠ちゃんとどういう関係なの?」
うわっ、ねこや先生。そこに反応します? えーと、ここはどう説明しようか。
「しんでんく~ん」
ねこや先生、怖いです。凄い迫力です。本物の猫みたいに目が光ってますう。
「まっ、まさかっ? アールニゴウさんと絵栗鼠ちゃんは『たっちゃんづけ』ってやつじゃあないでしょうねっ?」
うぐぐぐ、ねこや先生ーっ、胸倉掴まないでーっ! 苦しいーっ! それにボケがそれこそ地球とアルファケンタウリ星系ほど離れていて分かりづらいでーす。それは「たっちゃんづけ」ではなくて「いいなずけ」ですう。
「オキムネッ!」
おお、R-2号っ! 見てないで助けてくれっ!
「教エテクレッ! 『タッチャンヅケ』トハ何ダッ?」
「辰っちゃん漬け」と言うのはだな。亡くなられた俳優の梅宮辰夫さんがプロデュースした漬物……とか言ってる場合じゃないっ! 早く助けてくれっ!
「ウッ、ウムッ、コウカ?」
ねこや先生と一緒になって僕の胸倉掴んでどうするんだー。ねこや先生が僕の胸倉掴んでいるのを止めさせるんだよー。
「うふ。うふ。うふふふ。アールニゴウさんとあたしの初めての共同作業ですわね」
あ、ねこや先生の僕の胸倉を掴む手が緩んだ。
◇◇◇
だから、ねこや先生。R-2号は海外から日本に来たばかりで日本語がおぼつかないんです。エリスとR-2号は「いいなずけ」でも「辰っちゃん漬け」でもありません。R-2号には彼女に恋人と言ったものはいません。本当に。
「何ヲ言ッテイルノダ。オキムネ。アンドロイドニ『彼女』トカ『恋人』がイル訳ナイダロ」
話がややこしくなるから静かにしていてくれないかな。R-2号。
何やら考え込んでいるねこや先生。
「いろいろ分からないことが多いけど、アールニゴウさんに『彼女』がいないのは間違いないのね」
そうです。そうです。やっと分かっていただけましたか。これ以上、話がややこしくなる前に先手を打って言っておきますが、BLでもないですからね。R-2号は。
「先生ーっ、オキムネーッ、、R-2号さんっ! あたしはいつまで放置プレイ状態なのだっ? 痛いのだっ! 痛いのだっ!」
エリスごめん。本当にごめん。




