48 サダヨシ玉砕すw
「サダヨシとやら、一生懸命なのは分かるが、何を言ってるのか、さっぱり分からん。あたしは食べ物の好き嫌いはないから『肉食系』ではないし、『なでしこ』って何だ? あたしは『ヒト』だ。『花』ではないぞ」
サダヨシの熱い訴えは悲しいほどエリスには届いていない。と言うか何でこのシュチュエーションで妙に「冷静」なの? エリス?
しかし、サダヨシはめげない。赤面したまま再度立ち上がる。おおっ?
「それはともかく絵栗鼠ちゃん」
「……」
エリスはノーリアクションだが……
「剣汰瓜絵栗鼠ちゃん。僕のっ! 僕のっ! 『金塊』を見て下さいっ! 『恋人』から……いやっ、いやっ、『友達』からお付き合いをしてくださいっ!」
ズキッ
おっ、今のは何だ?
僕とエリスは『恋人』ではない。付き合ってはいない。だから、サダヨシがエリスと付き合おうが何も困らないはずだ。いやむしろ、今、僕がしょい込む羽目になっている数々の厄介ごとがサダヨシの方に行くことになって、大歓迎のはずだぞ。
なら、この気持ちの揺れは何だ?
「サダヨシ。『自由恋愛』において、このあたしに熱く求愛してくれているのは分かった。とても嬉しく思うぞ」
エリスの顔はいつになく真剣だ。
あれ? この展開は? 止めにかかるべきか? 僕は。ここで動かないと後悔することになるかも……
◇◇◇
「だが断るっ!」
またもない胸を張るエリス。何だか後光が差しているような。うーん。僕は何だかほっとしているぞ。
ドオオオーン
うわっ、サダヨシ。また血の涙流しているし。
「そうか、そうなのか。この、この本堂貞義。誠に無念だが、ストーカーにはなりたくない。潔く諦めましょう。しかしっ! せめてその理由をお聞かせ願えまいか」
「理由も何も、今、あたしはオキムネの『恋人』になって『金塊』を手に入れることで頭がいっぱいなのだ。他のことにまで気が回らん」
ガラガラガラガシャーン
サダヨシの後ろから落雷のような音が聞こえたのは僕の気のせいだったか。
そして、次の瞬間、凄まじい目でサダヨシは僕を睨んできたのだった。うわあ。
◇◇◇
サダヨシはおもむろに両腕を上に伸ばすと叫んだ。
「みんなっ! たのむっ! このオラに少しずつリア充に対する怒りを分けてくれっ! みんなの怒りが必要なんだっ!」
まっ、待てっ! サダヨシッ! 僕は「リア充」じゃないぞっ!
「はあああーっ! 喰らえーっ! 『怒り玉』ーっ!」
……
サダヨシは僕に向けて「怒り玉」を放ったが、「怒り」の集まりがよくなかったせいか、僕はノーダメージだった。
……
サダヨシはちらりと僕の方を見ると反対方向に走り出した・
「わーん。オキムネの『リア充』ーっ! 不純異性交遊ーっ! 酒ーっ! タバコーっ! 盗んだバイクで走り出すーっ! 十五歳の父ーっ!」
呆然とする僕。全く動じないエリス。




