45 オキムネの彼女は厨二でないとw
なかなか寝付けない時って、誰でもあると思う。
そういう時って、夜明け前になって、ようやくウトウトしてきて、起きなきゃなんない時に起きられなくなっちゃたりする。
一人暮らしの人なんか大変だろうけど、幸い僕の場合、そういう時は母さんが起こしに来る。
「オ・キ・ム・ネ 起・き・て」
ほら来た。ってあれ?
「オ・キ・ム・ネ 起・き・て」
何かいつもと違うぞ。えーと。
「オ・キ・ム・ネ 起・き・て」
いつもの母さんなら「ほらほら、起きてオキムネ。学校遅れるよっ!」のはずだ。それにこの声は母さんの声じゃなくて……
ふうううううー
ギャアーッ
いきなり耳に息を吹きかけられ、僕は飛び起きた。
目の前には四つん這いになって、僕の耳に息を吹きかけたらしい絵栗鼠がいた。
どういうことなのよ。これ?
「だっ、だっ、だっ、だっ、だってだな。お母上から『オキムネの彼女になった以上、あたしがオキムネを起こすのだ。これはオキムネを手に入れるためのミッションだ』と言ったのだ」
いやねだからと言って、何で耳に息を吹きかけるのよ?
「そっ、そっ、そっ、それはだな。最初はお母上から『オ・キ・ム・ネ 起・き・て』と優しく何度も行って起こすよう言われたのだ。しかし、それでもオキムネが起きなくてな」
まあそれは確かに起きなかったね。僕は。
「そうしたらだな。オキムネの耳に息を吹きかけるよう、お母上が言ったのだ」
そうなのね。全ての元凶は母さんだったのね。まあ母さんのやりそうなことだけど。あっ、よく見たら後ろの方で母さん爆笑してるし。
「ひぃーひっひ。ああっ、おかしい。絵栗鼠ちゃん、ホンットに素直でいい娘ねえ。オキムネ、絶対手離しちゃだめだよ。とっとと婚約しちゃいなさい」
もう何からどう言ったらいいもんやら見当もつきませんよ。
◇◇◇
まあとにかく朝食食べて学校行きましょ。
我が家は父さんが「朝飯にガッチリご飯を食わんと力が出ん」という人なので、朝食はご飯に味噌汁、海苔に焼き鮭が定番なのだ。ただ、和風に徹底しようと言うわけでもないので、ハムエッグとかも付く。
なので、我が家の食事はちゃぶ台とかではなく普通にテーブル。そこに家族全員が座る椅子が四つ。両親と僕と他県の大学に行ってる兄ちゃんの席だが、兄ちゃんの席に絵栗鼠が収まっている。
というかご飯と味噌汁を盛っているのだ。
「どうだ凄いだろう。ご飯と味噌汁を盛れるのだ。老谷のばあちゃんに教わったのだ」
またもドヤ顔でない胸を張る絵栗鼠。
「ありがとう。絵栗鼠ちゃん。でも、絵栗鼠ちゃんのお母さんはそういうこと教えてくれなかったの?」
「あたしは元第五皇女だから、両親からはそういうことは侍女にやらせとけばいいと言われていたのだ。今は地球の皇帝だが、やってみると面白いのだ」
「はああ、さすがはオキムネの彼女。見事な厨二ぶりだわ」
妙な感心の仕方をする母さん。また例によって行き違ってるなあ。




