41 まずは「手つなぎ」からw
「そういうわけであたしは結婚も婚約もしていないし、自由恋愛上等のお墨付きをもらっておるのだっ! 観念してオキムネの『金塊』を見せろーっ!」
ままま、しばし待てっ! 自由恋愛というのはだ。何でも「金塊」見ていいってもんじゃないんだぞ。
「へ? どういうことだ?」
結婚していない者同士だったら自由に見ていいもんでもないのだ。そういうのは「痴漢」とか「痴女」とか言って、おまわりさんが来るのだ。
「何っ? おまわりさんが来るのか?」
腕組して考え込む絵栗鼠。
「そうは言ってもわが地球ケンタウリ帝国にとって、オキムネの『金塊』は魅力だ。見たいし、ほしいぞ」
「だから絵栗鼠ちゃーん。じいちゃんの『金塊』ならすぐに見せるのにー。おまわりさんも呼ばないし」
「すまん。じいちゃん。気持ちはありがたいが、見ることが出来ても、手に入らない『金塊』はあたしも空しいのだ」
「しょぼーん。じいちゃん。がっくり」
◇◇◇
「ふふふ。まあまあ、絵栗鼠ちゃん」
何かばあちゃんも上機嫌だなあと思ったら、ばあちゃんも飲んでるのね。気が付けば食べ物も結構並んでるし、いつの間にか用意してくれたみたい。
「絵栗鼠ちゃんもオキムネちゃんも十五歳でしょ。妙印子さんも言ってたけど、十八歳まで結婚できないからねえ。まずは恋人同士から始めないとね」
「ばあちゃん。恋人同士になると『金塊』見られるのか?」
「うちも男の子三人で、しかもオタクだったから知らなかったけど、最近の女の子はませてるねえ。みんなこうなの? オキムネちゃん」
僕もそんなにたくさん女の子知ってるわけじゃないけど、絵栗鼠は特殊です。そして、巨大な勘違いをしています。
「??? まあいいか。絵栗鼠ちゃん。物事には順序というものがあってね。お付き合いを始めて、少しずつ親交を深めるんだよ。まずは手をつなぐあたりからかねえ」
「手つなぎ? 手つなぎってこれか?」
絵栗鼠は僕の右腕をがっちりと掴む。
「うーん。ちょっと違うのよね。でも、もうそんなこと出来るほど仲がいいんだ。手つなぎというのはこう」
ばあちゃん、おもむろに右手でじいちゃんの左手を取る。
「わわわ、何だ? ばあちゃん」
「はい。じいちゃんも立って、こうやってつないだ手を振って歩く。これが『お散歩デート』」
「わわわっ、ばあちゃん。わしゃ恥ずかしいぞ」
「何言ってんの。十五歳の女の子の前で服脱いで、『金塊』見せるとか言ってたくせに。普通そっちの方が恥ずかしいよ」
そう言いながらばあちゃんホントに嬉しそうだなあ。わっ!
「なるほどこれが『手つなぎ』というものか」
気が付けば絵栗鼠が右手で僕の左手握ってるし。
でも、今まで気が付かなかった。絵栗鼠の手柔らかいんだなあ。やっぱ育ちがいいからか。おっといかん。何かペースに流されてる気がしてきたぞ。




