40 自由恋愛に生きろ 第五皇女w
もはや誰も頼りにできん。どうやってこの事態を収拾するか。考えろっ! 考えろっ! オキムネッ!
そうだっ! 絵栗鼠っ! じいちゃんの「金塊」はばあちゃんのものと言ったな。何でだ?
「当然だろう。じいちゃんとばあちゃんは結婚してるんだから」
おっ、そっちの認識はあるのか。いけるかも。 絵栗鼠っ! 僕と絵栗鼠は結婚してないよな。だから「金塊」は見せられないんだ。
「??? そりゃあ、あたしは結婚していないが、オキムネだって結婚してないじゃないか。問題ないだろ?」
自由恋愛ですか? つーか絵栗鼠は第五皇女だろう。婚約者とかいなかったのか? ケンタウリ帝国は婚約とかあまりしないのか?
「失礼な。うちは名門の家系だぞ。三人の兄ちゃんと四人の姉ちゃんは結婚してるか婚約してるわい。あたしはしてないが」
へ? じゃあ何で絵栗鼠には婚約者がいないの?
「ふふふ。それはな。三人の兄ちゃんと四人の姉ちゃんが口を揃えて言ってくれたのだ。『エリス。おまえには社交界に出て、婚約するとか向かない。自由恋愛に生きろ』とな。どうだ。凄いだろう。エヘン」
得意のない胸を張るポーズを見せる絵栗鼠。
何か嫌な予感がするけど、聞いてみよう。初めから「自由恋愛に生きろ」と言われてたのか?
◇◇◇
「うんにゃ。うちは名門だからなー。初めは社交の場に出ろとか言われてたのだ。だけど、出てただダンスするとかつまらないじゃないか」
嫌な予感が的中する可能性が上がって来たなあ。でも、続きを聞くとしよう。
「最初の時は『夏』だったからなー。参加したみんなを涼しくしてやろうと思ってな。いきなり会場の灯りを消して、その中を蛍光塗料を塗ったシーツをかぶってな。釣り竿の先に蛍光塗料を塗った布を付けたものを二本持って、駆けまわったのだ」
…… その時のみなさまのご感想は?
「おうっ、大反響だったぞ。みんなキャーキャー言って喜んでいたぞ」
いやそれ喜んでなくて、マジモンの恐怖からくる悲鳴だと思うぞ。それで兄上と姉上たちは何と言ったんだ。
「おうっ、『おまえのやることには肝が冷えた』と言ってくれたぞ。涼しくなって良かったのだ」
「涼しく」はなっただろうね。で、やったのはそれだけじゃないよね。
「そうだなあ。一番上の兄ちゃんが皇太子になって結婚式をあげる時な。場を盛り上げようと思って、ロウソクの中に火薬を仕込んだ」
…… 死者出なかったよね?
「馬鹿者。あたしを舐めるな。ちゃんと火薬量を調節したわい。ちょっと天井が焦げたくらいだ。この時もみんなキャーキャー言って大盛り上がりでな」
…… 「盛り上がり」はしたろうね。




