36 オキムネの母もまた「剛の者」w
「まあああっ」
母さん、声を張り上げる。うむむ、嫌な予感がする。
「かっわいい。この娘。老谷さんのお孫さん?」
「いえいえ。この娘は絵栗鼠ちゃん。オキムネちゃんの高校の同級生だって」
「まあああっ。入学二日目にしてもう彼女が? さすがはオキムネ。うちの旦那に似て、足は遅くても手は早いわ」
やっぱり嫌な予感が当たったわ。母さんの恋バナ好きは筋金入りだからな。
「なになにそれで結婚の挨拶に来たの? まあ今は男女とも十八歳にならないと結婚出来ないからねー。まずは婚約かあ。あー、婚約破棄は認めないからね。オキムネ。それやったら廃嫡だよ」
廃嫡って何よ。うちには他県の大学行った兄ちゃんがいるじゃん。
「オタクのくせにノリが悪いわね。でも、良かったー。うちも男の子二人だから娘が欲しかったのよねー」
かますだけマシンガントークをかまし、ずいと絵栗鼠に近づく母さん。絵栗鼠の僕の右腕を握る手に力が入る。
「はっ、はっ、初めましてなのだ。お母上。だっ、だっ、だがっ、オキムネは返品出来ないのだ」
絵栗鼠の言葉を聞いた母さん。何故かガッツポーズ。
「かっわいーい。でかしたオキムネ。絵栗鼠ちゃんはもううちの娘だからね」
「ええ? 私は『皇帝』だぞ。誰のものでもないぞ」
これはもうばあちゃんの時以上に絵栗鼠との会話がかみ合わないw。
◇◇◇
「まあまあ、妙印子さん。今日はね私らが住んでた家に絵栗鼠ちゃんと親戚のお兄さん二人が住むことになって家で歓迎会なのさ。それでオキムネちゃんを借りたいんだけど」
「まあああっ、このお兄さん二人もイッケメーン。」
母さん大興奮。わああ、鼻血出さないでよ。
「もういっそさあ、オキムネが老谷さんち住んで、絵栗鼠ちゃんと、このかっこいいお兄さんたちがうちに住めばー」
実の息子を何だと思ってるんですか? 母さん。それはないでしょう。
「まあまあまあまあ」
ばあちゃんが笑顔で仲裁に入る。
「そんなに絵栗鼠ちゃんとお兄さんたちが気に入ったのなら、妙印子さんも歓迎会に来ればー?」
「そうしたいのはやまやまだけどねー」
母さんちょっと残念そう。
「もううちの夕飯作っちゃったし、亭主もそのうち帰ってくるからねー。今回は遠慮しとくわ。まあ、絵栗鼠ちゃんがうちの馬鹿息子と結婚してくれれば、いつでも徹夜で飲み交わせるし」
いや結婚も何も僕と絵栗鼠はまだ付き合ってもいないわけなのよ。母さん。
「あー照れるな照れるな思春期ボーイ。彼女と母親は大事にしろ」
ぜんっぜん、聞く耳を持ちませんな。お母上。




