34 それではあたしとオキムネのねっとりとした関係を説明できてないw
「オキムネちゃんも歓迎会来てくれるよね?」
タクシーの車内、老谷のばあちゃんのお誘いだ。
「おうっ、もちろん参加するぞっ!」
何で絵栗鼠が答えるの? でもまあ、老谷夫妻と絵栗鼠たちだけにするのはまだ不安だしなあ。参加したいけど……
「ばあちゃん。オキムネは参加だっ!」
何だか懸命な絵栗鼠。ばあちゃんは笑顔で見ている。
参加したいけど、まだ母さんに夕飯いらないって言ってないんだよ。
「あっ、そうなの」
ばあちゃんの顔がぱあっと明るくなる。
「それはかえっていい機会だわ。久々に妙印子さんにも会ってみたいしね。お隣さんだし、絵栗鼠ちゃんたちも一緒に挨拶すれば」
「何? オキムネのお母上に挨拶するのかっ?」
緊張感あふれる表情の絵栗鼠。
「何て言えばいいのだ? 『貴様のようなディープでガチモンのアニオタには娘はやれんっ!』かっ?」
なんだよそれ。誰が誰に対して言うセリフだよ。
「はっはっはっ、相変わらず面白い子だねえ。いいんだよ。普通に『今度隣の家に間借りすることになりました者です。大家さんと一緒に挨拶にきました』と言えばいいんだよ」
「ばあちゃん。それではあたしとオキムネのねっとりとした関係を説明できてない気がするが?」
誰と誰が「ねっとりとした関係」だっ! ばあちゃんの言うとおりに言えばいいのっ! くれぐれも余計なことを言うなっ!
「デ、オキムネ。自分タチハ脱グノカ? 飛ブノカ? ソレトモ両方カ?」
メタルヒーローズッ! そっちも余計なことは言うなっ! やるなっ! 「絵栗鼠の親戚の者で海外から日本に仕事を探しに来ました。よろしくお願いします」とだけ言えっ! 他は一切言うなっ!
「オキムネ。自分タチハ絵栗鼠様ノ親戚ジャナイゾ。ソレニ脱イダ方ガマダムハ喜ブンジャナイノカ?」
今は親戚ってことにしとけっ! その方が丸く収まるんだよ。脱ぐ件はだな…… うちの母さん、イケメンが脱げば喜ぶわな。それはもう100%喜ぶ。しかしっ! 脱ぐな。脱がないでくれ。その方が無難なのだ。
「ヨク分カラナイケド、分カッタ」
◇◇◇
「で、オキムネちゃん。わしは何をやればいいんだ?」
じいちゃんはうちの母さん良く知ってるでしょう。「久しぶり」って言ってりゃいいんですよ。
「え? わしは脱がなくていいの?」
何でそういう話になるの? でね、じいちゃんが脱いでも母さん喜ばないと思う。
「まあ、そう言わずに。これでも脱いだら凄いんだぞ」
何でそう脱ぎたがるの? 脱がなくていいから。
「よーしっ、ミュージックスタート!」
♪ちゃんちゃかちゃんちゃんちゃんちゃんちゃん ちゃんちゃかちゃんちゃんちゃんちゃんちゃん ちゃ~ちゃらら~ららら~
やめろっ! メタルヒーローズッ! 「タブー」を流すんじゃないっ! じいちゃんにピンクの光線を当てるなっ!




