33 余計なことばっかり言ってると置いていかれるよw
ざわざわ
また店内がざわめく。
全くもう余計なことばかり言うんだから。前使ったのと同じ手使うしかないね。
えーみなさん。これは日本にきた外国人の方によくある発音についてのこだわりなのです。そう、例えば「マトリックス」ではない「メイトリー」と言ったような。
日本語風に言えば、ヴィヴィッテンシュタイン公国で正しいのです。
「オキムネちゃん」
あ、じいちゃんが真面目な顔してる。
「うっそだあー」
え? じいちゃんがそれ言う?
わあっ、じいちゃんが余計なこと言うもんで、納得しかけた周囲の女性たちがスマホで検索を始めた。
やばいっ、「ヴィヴィッテンシュタイン公国なんて国は、この地球上にない」のは事実だし。
◇◇◇
「オキムネッ! Rー1号さんっ! R-2号さんっ! 何を遊んでいるのだ? ばあちゃんの荷物を運ぶために呼んだんだぞ。ばあちゃんお待ちかねだぞっ!」
そうそうそうでしたね。絵栗鼠。そして、メタルヒーローズが絵栗鼠が「飛んで来い」と言ったのを忠実に実行してこの騒ぎですよね。
「ばあちゃんが呼んだ大型タクシーとやらがもう来たそうだぞ。遊んでないで早く荷物運ぶんだ」
遊んでたわけじゃないけど、ナイスタイミング! 絵栗鼠。助かったわ。このままだと話が脱線し続けて、ずっとスーパーマーケットにいる羽目になるところだった。
「何? オキムネ。あたしのおかげで助かったのか?」
ああ、今回は助かったわ。本当。
「ふっ、ふーん」
ここでまたドヤ顔。ない胸を張る絵栗鼠。
「全くオキムネは仕方がない奴だなー。あたしがいないと駄目なんだから」
そう言いながら僕の右腕を取る絵栗鼠。わあっ。
「あたしがオキムネをばあちゃんの言う大型タクシーまで連れてってやるぞっ! さあっ! 一緒に行こうっ!」
いや僕、別に幼稚園児じゃないんだから、絵栗鼠に腕つかまれなくても自力でタクシー乗り場まで歩けますが。
「いいからそのままにしてろ。あたしが連れてってやらないとオキムネは駄目なんだから」
「あらあら可愛いこと。絵栗鼠ちゃん、オキムネちゃんのことは頼んだわよ」
「おう、ばあちゃん。任せてくれ。オキムネのことは」
「うふふ。じゃあそこのかっこいいお兄さんたち、荷物を大型タクシーまで運んでくれる?」
「「ハイ。マダム」」
ざわざわざわ
店内のざわめき再び。
「どうやらあの高校生の女の子と男の子がカップルみたいね」
「とすると、あのかっこいいお兄さんたちは何者?」
「女の子はあのおばあちゃんの孫かな? でもかっこいいお兄さんたちは違うようね。外人さんぽいし」
「ああもうっ、気になるっ! あのかっこいいお兄さんたち、何なんだろう」
僕はそんな声を尻目に絵栗鼠に腕を引かれていった。後からばあちゃんに指示されてメタルヒーローズが荷物が乗ったカートを二台ずつ軽々と引っ張って来る。
いろいろ引っかかるもんもあるが、取りあえず事態は収拾できたし、良しとしよう。
でも何か忘れてるような。
「おーいっ、わしを置いてくなあ」
あっ! じいちゃん。
 




