31 じいちゃん大ピンチ(自業自得)w
シーン
老谷のじいちゃんの爆弾発言で場は一瞬にして静まり返った。
だけどそれも一瞬。すぐにざわめきがぶり返す。
「あのー」
さっきの女子中学生がまたおずおずと手を挙げる。
「『気合』で空を飛べるんですか?」
「飛べます」
ドヤ顔の老谷のじいちゃん。
「『気合』で空中急転回出来るんですか?」
「出来ます」
更にドヤ顔の老谷のじいちゃん。
「『気合』で靴底から火が出るんですか?」
「出ます」
更に更にドヤ顔の老谷のじいちゃん。
「……うっそだあっ」
ズコー
女子中学生の言葉にズッコケるじいちゃん。うんうんと頷く周りの人たち。
◇◇◇
「あのおじいちゃんはこのかっこいいお兄さんたちとどういう関係で?」
今度聞いて来たのは二十歳くらいのお姉さん。
「ほっほっほっ、わしはこういうものですぢゃ」
じいちゃん立ち直り早過ぎ。そして、出した名刺は……
イケメンアイドルスーパーモデルマスター プロデューサー 老谷若孫
しばらくしげしげと名刺をながめていたお姉さん。おもむろにスマホを操作しだすと……
「それってこのゲームのことですよね」
見せたスマホ画面には「イケメンアイドルスーパーモデルマスター」のアプリが。
「あ、それ、私もやってます」
「私も~、ドハマりしてます」
「私、結構、課金しちゃって」
「分かる~。ゲームに出てくる事務員のお兄さんに『もう一歩で彼らはスーパーモデルになれます。そのためにはあなたのお力が必要です』って言われるとつい課金しちゃうのよね」
「私も~私も~」
スマホゲーム「イケメンアイドルスーパーモデルマスター」で盛り上がるお姉さんたち。
あ、後ろの方でさっきの高校三年生のお姉さんたちが呆然とした顔で見てる。あの人たち、じいちゃんの名刺がスマホゲーの丸パクリだって気が付かなかったんだよね~。
そして、じいちゃんの方を振り返るお姉さんたち。
「でもおじいちゃん凄いですよね。失礼ながらそのお年で、しかも男性で、このゲームやってるなんて」
「ほっほっほっ、そうぢゃろそうぢゃろ」
ご満悦の表情のじいちゃん。
「「「「「って、なるかあっ!」」」」」
女性陣一斉のツッコミ。そりゃそうだよねえ。
◇◇◇
「私たちはこのかっこいいお兄さんたちのこと知りたいし、何で空を飛んだか知りたいんですっ! 『イケメンアイドルスーパーモデルマスター』ごっこじゃなくてー」
「どうやって空飛んだんですかっ?」
「えーっ、えーとね。『気迫と根性』かなあ~」
じいちゃあん。またそういう火に油を注ぐ発言を~。




