3 赤い眼 青い眼 黒い眼w
分かったあっ!
思わず大きな声が出た。
右眼だけで見ると剣汰瓜絵栗鼠が黒髪ロングのブレザー着用に見えて、左眼だけ、もしくは両眼で見ると銀髪銀色ボディーに見えるんだっ!
「止めろ、オキムネ。恥ずかしい」
え? サダヨシ。おまえがそれを言う? って、あっ!
思わず大きな声が出た僕を襲う視線の数々。そうだったあー、ここは高校の入学式の会場だったっ!
たちどころに湧きおこる僕についての噂話。
「あれ誰?」
「新田興宗だよ。荒井中から来た」
「先天的なオッドアイなんだよ。まあそれ以外はパッとしないけどね。超能力とかもないみたいよ」
僕が言う前に僕の紹介をしてくれてありがとう。手間が省けたよ。
そう、僕は右眼の瞳の色が黒、左眼が青のオッドアイだ。何でも母方のばあちゃんが四国の出で、遠いご先祖に難破した捕鯨船から漂着したアメリカ人がいたとかいう話もあったけど詳しいことは分からない。
で、解説(?)にもあったように「俺の左の魔眼が悪を射抜く」などということも全くなく、ただ色が違うってだけだったんだが……
だけど、左の眼でだけ銀髪銀色ボディー(僕好み)が見えるということはっ?
わあっ、剣汰瓜絵栗鼠と眼が合ったーっ!
銀髪銀色ボディーに陶磁器のような白い肌に加えて、瞳の色は燃えるような赤。綺麗だとも思うけどちょっと怖い。というか僕のこと睨んでます?
「おおっ、おっ、おっ」
僕の焦りにまるで気付いていないであろうサダヨシ。
「やったじゃん。オキムネ。剣汰瓜絵栗鼠もおまえのこと見てんじゃん。これはいけるんじゃないかーっ? このこの」
サダヨシ。そのポジティヴシンキングには感服する。でも、これはおまえが思ってることとはちょっと違うんじゃあ……
◇◇◇
とはいえ、その後の入学式はつつがなく終わった。
で、そうなるんじゃないかなあとうすうす思ってはいたが、僕と剣汰瓜絵栗鼠は同じクラスだった。
でも、絵栗鼠は一番前の席、僕は結構後ろの席。特に後ろを振り返って僕のことを気にする様子もない。
定番の自己紹介でも「風呂岸間中学から来ました剣汰瓜絵栗鼠です。よろしくお願いします」と淡々と言って、聞いた方もパチパチと型通りの拍手をしただけだった。
さて、僕の番だ。僕も「荒井中から来ました新田興宗
です。よろしくお願いします」と淡々と言った。だが……
「いよっ! 色男っ! 入学式から絶好調っ! この場で告白しちゃえっ!」
これまた同じクラスになったサダヨシの掛け声にもう教室内は大爆笑。
勘弁してくれよ。もう。
と言うかですね。絵栗鼠が僕を見る赤い眼が一段ときつくなったような気がするんですけど……