207 我が愛しの娘の初デートを成功裏に終わらせるためには、私はどんな努力も惜しまないw
とにかく母さんにエリス、今すぐに僕の部屋を出て行ってください。プライバシーの侵害です。
「ふっ、オキムネ」
な、何ですか。母さん。
「プライバシーの侵害を謳うのであれば、普段から自分の部屋を綺麗にしておくことね」
ぐっ、痛いところをついたつもりか。しかし、負けんぞ。でも、母さん、僕が自分の部屋綺麗にしていても、僕の部屋に入ってきますよね。
「うーん。まあそうねえ」
がくっ、あっさり認めないでください。
「と・も・か・く」
うわ、母さん力がこもっていますね。
「我が愛しの娘絵栗鼠ちゃんの初デートを成功裏に終わらせるためには、私はどんな努力も惜しまない」
あのー、実の息子は僕なんですけど。エリスはあくまで隣の家の娘で。
「我が愛しの娘絵栗鼠ちゃんの初デートを成功裏に終わらせるためには、私はどんな努力も惜しまない」
聞く耳持ってませんね。
◇◇◇
「とにかく絵栗鼠ちゃん。いくらオキムネ好みでもヌードや裸エプロン、ビキニは風邪ひくし、おまわりさんに捕まる。長袖から何か探してみましょうか」
「うーむ」
はあ、そう言っていいのかどうか分からないけどガールズトークぽいのが始まっちゃったわ。自分の部屋に何かいたたまれないので顔でも洗ってこよう。
奥の方から凄まじいいびきが聞こえてくる。父さん、R-1号とペース合わせて飲んでいたからなあ。何しろR-1号はアンドロイドだから飲み過ぎるってことはないから、ペースを合わせれば、そりゃあ潰れるよね。
◇◇◇
「ありゃあ、どれもこれもサイズが合わないねー」
「むー」
どうやら母さんとエリスは僕の部屋を離れたみたい。母さんが自分の服をエリスに着せているみたいだけどサイズが合わないみたいだね。母さん、あれでスタイルはいいからなあ。エリスは正直幼児体型だし。
「仕方がない。絵栗鼠ちゃんの家に行って合いそうな服さがしてみようか」
「むー」
「でオキムネ。そこにいるんでしょ? あんたも来なさい。どうせろくな服持っていないんだから、いい機会だからアールイチゴウさんとアールニゴウさんの持っている服見て、勉強しなさい」
えーっ、いやだって母さん、R-1号とR-2号の服を見るったって、あいつらは……
◇◇◇
R-1号とR-2号はアンドロイドだから服は……と母さんに言うわけにもいかず、半ば強制的にエリスたちの借りている家に行くことになった。
「おはようございますー。アールイチゴウさん、起きてるー?」
母さん、朝から元気だなあ。でもR-1号はこの時間はコンセントから充電しているじゃなかったっけ?
「オハヨウゴザイマス。オ母上」
うわあ、シルクっぽいニットにスリムパンツ。カジュアルな格好で出てきやがった。いつどこでそんなの覚えた? R-1号。
「見た見た? オキムネ。これよこれ。こういうのをお手本にしなさい。オキムネ」
ハイテンションでR-1号を右手で指差し、左手の掌で僕の頭をぐりぐりする母さん。いやどうせR-1号の奴はイリュージョンでそう見せているだけなんだけど。でもどこで覚えやがった。
「アールイチゴウさん。絵栗鼠ちゃんが今日デートなんだけど、いい服ないかしら?」
「ホウ。ドノヨウナ服ガゴ所望デ?」
「そうねえ。やっぱ高校生だし、今は春だし、白のブラウスと紺のデニムとかの組み合わせがいいかもね。そういうのあるかしら?」
「何カ写真トカ、イラストトカアリマスカ?」
「こういうやつとか」
母さん、普通に僕の持っているラブコメのコミック本を持ってきて、目的のページを開く。息子のコミック本を勝手に持ってきたということに対するわだかまりは全くなし。
「ホウホウ」
しきりと感心するR-1号。
「シバシオ待チヲ」
奥の部屋に入ると
ガシャンガシャーン
異音を発するR-1号。
まさかその場で作っているのか?
「オ待タセシマシタ。コレデイカガデショウ?」
「あら、いいじゃない」
大喜びの母さん。おい、R-1号。あれどうやって作った?
「老谷ガ残シテイッタ布デ作ッタ」
昨晩の「大リーグボール養成ギブス」はそうやって作った?
「台所ノ鉄鍋デ作ッタ」
なんちゅう。母さん。うちの鉄鍋、一つR-1号に無断で潰されていますよ。




