20 いや本当に高校生はパチンコ店入っちゃ駄目なんですよw
「私ハッ、私ハッ、間違ッテイター。正樹四ツノ誓イヲ破ルトハー」
Rー1号。両膝をつき、頭を抱え込む。
ジャジャジャーン ジャジャジャーン
Rー2号が流すBGMはベートヴェン交響曲第5番「運命」。二体のメタルヒーローズって、お互いにどういう関係なの?
ざわっ
周囲の女性陣のざわめきが大きくなる。いかんいかん。そんなことより早く事態を収拾しないと。
◇◇◇
Rー1号。分かってくれればいいんだよ。さあ、パチンコ打つの止めて帰ろう。
「打つの止めてくれるのー」
男性店員。顔面から涙、鼻水、よだれをたらしたまま大喜び。
「アアッ、正樹四ツノ誓イノ四ツ目。『共存共栄』。勝チ過ギハ良クナイ」
「うれしー。ついてはかっこいいお兄さん。これからもお手柔らかにお願い出来ると」
「オ手柔ラカッテ何ダ? 手ガ軟体動物デ出来テルノカ?」
「……(絶句)」
いや、そういう婉曲的な表現は通用しないんだから、このアンドロイドには。Rー1号。これからは決まった数の銀の玉取ったら、そこで終わりにしてよ。
「分カッタ。ソウスル」
安堵したのか今度は男性店員が膝から崩れ落ちた。
「良がった~。良がった~。君、高校生? 高校出たら、うちの店に打ちに来てよ。勝てるかどうか保証できないけど」
それじゃただの集客じゃないですか。まあいいけど。
◇◇◇
しかし、勝ったもんだねえ。何十箱あるの? Rー1号。つーか、大元の玉はどうしたの?
「訳分カランノデ、ココデ立ッテタラ、ココノまだむガ『お兄さん、かっこいいわねえ。何? 玉買うお金がないの? じゃあ、あたしの分けてあげる』ト言ッテクレタ」
はいはい。美形は得だよねえ。ところでどうしようかねえ。この玉。
「オキムネ。コウイウ時、正樹ダッタラ、コウ言ウゾ。『店員さん。この玉、全部チョコレートに代えて、店のお客さん、全員に配って』テネ」
キャーッ
女性陣の悲鳴が上がるの、これで何回目だ?
「素敵ーっ、素敵ーっ」
「お兄さん。顔だけじゃなく、心も美形なのね」
「あーもう、失神しそう。あたしのハートはあなたのもの」
「もう一人の金髪のお兄さんもかっこいいわー。また打ちに来て。そしたらこの店に通うわ」
「あ、君。君は高校生だよね。高校生はパチンコ店入っちゃ駄目だからね。補導されるよ」
はいはい。ご心配ありがとうございます。僕ももうしばらくパチンコ店には入りたくないですよ。Rー1号とRー2号の後始末する羽目になるんだから。
んで、玉の処置も決まったし、Rー1号もRー2号もとっとと老谷さんちに帰るぞっ!
さすがに二回連続の後始末は僕も疲れたよ。
ん? 何か一つ物凄く重要なことを忘れているような気がするぞ。




