2 コスプレ少女VS地味っ娘w
剣汰瓜? また、変わった名字だな。
「いやいや、変わった名字ってあるっしょ。時折、テレビ番組とかYouTubeとかでも取り上げられてるじゃん」
それはそうか。で、風呂岸間中学ってどこだ?
「知らん!」
知らん? サダヨシ、おまえこの情報どこで仕入れたんだ?
「別の三人に聞き込み調査したから、精度は高い。他に職員室のパソコンにハッキングして新入生女子全員の履歴書をコピーしようとしたが、それは出来なかった」
やめろっ! 入学早々、腐れ縁がネットでネタにされるのは見たくねえっ! つーか、おまえ、新入生全員の情報こうやって集めてるの?
「うん。やってる。適当に女の子指差してみ、その情報出すから」
怖いよ。おまえ。それに凄すぎ。
「何を言うかっ! オキムネっ!」
サダヨシはすっくと立ちあがった。わおっ!
「これから先彼女たちの男のアリナシを把握して我が野望は完成するっ!」
やめてっ! その野望! いや、そういうことが聞きたかったじゃなくてね。おまえ、剣汰瓜絵栗鼠見て何とも思わんの?
「……」
それまで饒舌だったサダヨシが急に黙り込んだ。だが、すぐにニヤリと笑った。
「ふむふむ。オキムネ君。ああいう娘が好みなのだね。いい加減長い付き合いだけど、それは知らなかった」
言うが早いかサダヨシはスマホに何か入力しているし、え? 僕の情報ファイルもあるの? 怖いって。いやそうではなくて、入学式に一人だけコスプレ少女がいるって変じゃないのか?
「???」
その時、サダヨシは心底何を言っているか分からないという顔になった。え?
「コスプレって何のことだ? 黒髪ロングの眼鏡っ娘。新入生の中でも一番地味なクチだろ?」
! サダヨシにはそう見えるのかっ? ならば周りが剣汰瓜絵栗鼠を見て騒がないのもそういうわけで。では何で僕にはコスプレ少女に見えるっ?
「…… はっはあー」
サダヨシは何やら納得顔。
「惚れてしまえば何とやらとは言うけれど、地味な娘がコスプレ少女に見えるとは…… このっ! このこのっ!」
サダヨシ、僕を右手で軽く叩こうとする。わっ、思わず眼を閉じる僕。
あっ!
眼を閉じた瞬間、剣汰瓜絵栗鼠が黒髪ロングのブレザー着用に見えたのだ。
こっ、これはっ! 僕は何度も眼を開けたり閉めたりした。
すると剣汰瓜絵栗鼠が銀髪銀色ボディーに見えたり、黒髪ロングブレザー着用に見えたり……
「オキムネ。おまえ何やってるの?」
呆れた表情で僕を見るサダヨシ。
ちょっと静かにしてくれ。もうちょっとで何か分かりそうなんだ。