190 皇帝の勅命ってそんなに軽くていいのかな?w
R-1号が口から吐き出した「履歴書」をまるで気にせず普通に見る犬咲店長。「イケメンだから許す」なんだか、もともと気にしない人なのかは分からない。
「ふむふむ。山奥の中学校を出て、ここの高校に入ったのね。で、いきなり一人暮らしさせるのも不安なので、ちょうど海外から来た二人のお兄さんと同居。ふむふむ」
「わんわん店長。失礼な。山奥とは何だ。ケンタウリ帝国は都会だぞ。それにお兄さんではなく護衛用アンドロイドだぞ」
「はいはい」
エリス、余計なことを言わないようにと僕が言う前に犬咲店長が華麗にスルー。楽と言えば楽だけど、「いいのかなこれで」とやはり思う。
◇◇◇
「んじゃ、『履歴書』もオッケー。でわでわコスプレいってみようっ!」
犬咲店長、コスプレにやる気満々ですね。レジとか商品陳列とか荷物運搬とかの仕事はないんですか。
「うん。それも大事」
大真面目な顔で頷く犬咲店長。そこに現れる琴理さん。
「店長っ! ありましたっ! 『孔明コス』ありましたっ!」
「何? でかしたっ! さすがは琴理ちゃん」
大真面目な顔。1分で終了。満面の笑みの犬咲店長。
これもまた満面の笑みで孔明コスプレグッズを並べる琴理さん。帽子に服に、何といっても孔明の代名詞でもある羽扇。
うん。思ったよりまともだ。時折見かける女体化まではしなかったね。よかったよかった。
とか言っている場合ではないね。
店長。琴理さん。大前提として、コスプレするかどうか、R-1号に聞いてないでしょう?
「「あ、言われてみればそうね」」
見事にハモる店長と琴理さん。息ぴったりですね。
「かまわんぞ。R-1号さんならいくらでもコスプレに使ってかまわん」
本当にエリス。二体の護衛アンドロイドのことをどうでもいいと思っているのね。はあ。
◇◇◇
「とエリスちゃんは言っているけど。アールイチゴウさん、コスプレしてくれませんか?」
一応は丁寧にお願いする犬咲店長。
「私ハエリス様に従ウマデ」
「ひゅー」
何故か口笛を吹く犬咲店長。
「麗しいわ。麗しいわ。何という忠義心。まるで劉備と孔明ね」
まあ確かにR-1号の忠義心は孔明と言えなくもないけど、エリスは絶対劉備じゃないですよね。こんな劉備じゃ誰もついてきません。
「はい。新田君はこれを着て」
へ? 何ですか? これ? 琴理さん。
「三国志の兵士のコスプレだよ。簡単な鎧と槍。丞相孔明様を護衛する兵士ね。アールイチゴウさんは今日うちの店に来たばかりだから、店員の新田君がフォローしてあげて」
ツッコミどころは満載です。店員ではないR-1号にコスプレさせて、バイト二日目の僕にフォローさせる?
「ぐだぐだ言わずにやれ。オキムネ。バイト代を稼げ。これは皇帝の勅命だ」
皇帝の勅命ってそんなに軽くていいのかな?
 




