188 本当にこの店、店ごと異世界転生しそうなノリなんですねw
エリスの手を引っ張り、「Staff Only」の部屋に駆け込む。続いて駆け込む犬咲店長と琴理さん。
老谷のじいちゃんは……入れないよね。Staffじゃないもんね。
「Staff Only」のドアの前でワイワイガヤガヤのみなさま。
そんなみなさまを前に老谷のじいちゃんがドアを背にして一言。
「えーみなさん」
なんだなんだ? 老谷のじいちゃんに注目するみなさん。
「今日はわしのライヴに来てくれて、アリガトウッ!」
シーン
いや、じいちゃん。思い切りすべってますって。
◇◇◇
さて、「Staff Only」の部屋の中。
「ではでは、今日の絵栗鼠ちゃんのコスプレはと……」
犬咲店長、初手からそれですか? 僕たちの履歴書の話はどうなったんです?
「あー、そうねえ。犬咲店長と絵栗鼠ちゃんの仲だから、目と目で通じ合うでいいとも思うけど、それ言うと有象君から叱られちゃうのよね」
何か分かってきました。犬咲店長と琴理さんの暴走を制御するのが有象さんなんですね。
◇◇◇
「素晴らしい。素晴らしいわ」
エリスが書いた履歴書を見て、涙ぐむ犬咲店長。なんかまた嫌な予感がしてきたぞ。
「見て見てー。琴理さん。絵栗鼠ちゃんの住所『地球ケンタウリ帝国王宮』だって、前歴は『ケンタウリ帝国第五皇女』で、今は『地球ケンタウリ帝国皇帝』だって」
ぶっ、珍しくエリスの奴が、ブーたれずに黙々と履歴書、書いていると思ったら、そんなことを書いてやがったか。いや、本当のことではあるんだけど。
「見上げた『厨二魂』だわ。さすがは我がオタ友鵜鷺の教え子。まさに大型新人ね」
「さーて、今日の絵栗鼠ちゃんのコスプレは、『皇帝コスプレ』か『第五皇女コスプレ』か」
「オキムネ。さっきから店長と琴理さんは何を言っておるのだ?」
都合よくエリスのことを「厨二」だと思ってくれているのだ。そのままにしとけと言いたいところではあるが、店長。本当にこの履歴書でええんですか?
「あー、そうねえ。犬咲店長と絵栗鼠ちゃんの仲だから、生まれる前から結ばれていたでいいとも思うけど、それ言うと有象君から叱られちゃうのよね」
本当にこの店、有象さんがいなかったら、宇宙空間に転移するか、店ごと異世界転生しそうなノリなんですね。
だってさ、エリス。今住んでいる日本の住所と高校生ということで、履歴書、書いて。
「何をぬかす。オキムネ。あたしが住んでいるのは『地球ケンタウリ帝国王宮』だし、あたしは『地球ケンタウリ帝国皇帝』だぞっ!」
やっぱそう言うよね。




