186 みなの者へ伝えい。そこは「皇帝陛下万歳!」だとw
それからは体感時間ではえらく長く感じたけど、バスは無事に終点の駅前に到着。
バス停降りたすぐ先のビルの中に下総屋のテナントも入っているのだ。
だけど終点のバス停に着いたのに、誰も降りないのは何故?
パチパチパチ
何? この拍手?
「ではみなさん。『推しカプ』様を拍手で送りましょう。『推しカプ』様バンザーイ」
「バンザーイ」
「バンザーイ」
「バンザーイ」
「オキムネッ!」
◇◇◇
わわっ、何だ? エリス?
「オキムネッ! 『推しカプ』とは何だっ?」
ええっ? 今更その話? 何かここで説明を間違えるとエリスから「なら『金塊』よこせ」と言われそうだぞ。つまりだね。「推しカプ」とは、みなさんが僕とエリスを応援してくれているのだよ。
「それでみんな『バンザーイ』と言っておるのか?」
そうそう。
「あたしとオキムネ二人に『バンザーイ』と言っておるのか?」
そうそう。
「ええいっ、ここな粗忽者がっ!」
◇◇◇
何で怒るの? つーか「時代劇」ならともかく「現代劇」で「粗忽者」という単語を出すのはもはやエリスだけだと思うよ。
「参謀総長っ! みなの者へ伝えい。そこは『皇帝陛下万歳!』だと」
ええ? そこ? だけど、今はエリスが自分のことを皇帝だと言っても、厨二と思ってくれているけど、あんまり宣伝すんのよくなくない?
「や・る・の・だ。オキムネ」
わあっ、下から胸倉をつかむなっ! それにいつブラウスの上のボタン外した? 隙間からない胸が見えて…… うわあ、いろいろとヤヴァイ。
げーほ、げほげほ。みっ、みなさんすみません。
「「「「「何かなー?」」」」」
せっかく「推しカプ」様万歳と言っていただけてありがたいところなんですが、そこを「皇帝陛下」万歳に変えてもらえませんか?
ざわ ざわざわ
ざわめく周囲。そりゃそうだよね。いかな厨二慣れしているこの町の人々もこの突発的な提案には驚く。
げーほ、げほげほ。み、みなさん、お願いします。このままではいろいろとヤヴァイんです。
「皇帝陛下万歳!」
あ、見兼ねたのか一人の人が言ってくれた。
「皇帝陛下万歳!」
「皇帝陛下万歳!」
「「「「「皇帝陛下万歳!」」」」」
この大合唱にやっとエリスは満足。
「苦しゅうない。朕は満足じゃ。ほっほっほ」
どこの平安貴族だよ。みなさま方に鷹揚に手を振るエリスの手を引っ張り、僕は運転手さんに「すみませんでした」と言って、二人分の運賃を払うとバスを降りた。すると……
「やあやあやあ、二人とも待ってたわん。いよっ、『推しカプ』!」
下総屋の窓から僕たちを見下ろし、満面の笑みを浮かべるのは犬咲店長。うわ脇に琴理さんはともかく、老谷のじいちゃんまでいる。これはまたただでは済まない予感が。
 




