178 それが今やモテてモテてモテてモテてモテてまくるとはw
「ぬっ、ぬおおおーっ!」
エリスが僕の口にニンジンを押し込めた瞬間、サダヨシの雄叫びが上がった。ああっ、もうっ。
「諸君っ! 諸君っ! 見たかね? このリア充ぶりっ! 許せんだろう。許せんだろう。諸君っ! 立ち上がれっ!」
あーあ、サダヨシ、アジテーション始めちまったよ。
「オキムネッ! 何をしている? 今度はあたしに『あーん』する番だろ?」
あ、エリスに呼ばれた。はいはい。ニンジンでいいですか? はい、「あーん」
「あーん」
「ぬおおおお、見たかっ? 諸君っ! リア充退治に行くぞっ!」
シーン
「ぬお?」
◇◇◇
「諸君っ! どうしたっ? どうしたというのだ。リア充が憎くないのかっ?」
なおも続くサダヨシのアジテーションに他の男子生徒は顔を見合わせる。なお、エリス以外の女生徒のみなさまは全員が窓からR-2号を見てキャッキャ騒いでおられます。
やがて男子生徒の一人が意を決したように前に出た。
「本堂」
「な、何だ?」
「確かに俺たちも新田の奴が剣汰瓜さんと毎日毎日毎日毎日いちゃついているのは、俺たちもズルイ、キタナイ、ウラヤマシイ、ウラメシイと思う」
僕はいちゃついてはいないが。
「なら、何故立ち上がらぬ?」
「しかしだ。新田はあくまで剣汰瓜さん一人にモテていることに過ぎぬ。本堂、あれを見ろっ!」
ばんばばーん
指差されたその先には、窓からR-2号に熱い視線を送る女生徒のみなさまたちが。
「リア充新田を糾弾しているうちに他の女の子たちがあの金髪碧眼筋肉質兄ちゃんにかっさらわれてもいいのかっ? 本堂っ!」
「ガガーンッ」
ショックを口に出して表現するサダヨシ。そして、ゆっくりと膝から崩れ落ちる。
「分かったか。本堂っ! 真の哀しみを。剣汰瓜さんといちゃつかれることも哀しいが、他全員の女生徒のみなさまをかっさわられるのは俺たちにとってもっと哀しいっ!」
だから僕はいちゃついてないっつうの。
◇◇◇
「何てこったい」
崩れ落ちたままのサダヨシ。
「あの金髪碧眼筋肉質兄ちゃん。本名アールニゴウさんは、かつて俺と一緒にリア充オキムネを糾弾すべく共に戦った人だ」
そうだねえ。一緒になっていろいろやってくれたねえ。そして、鵜鷺先生に怒られていたねえ。
「それが今やモテてモテてモテてモテてモテてまくるとは。何たる現実」
「おおう、この俺。本堂貞義はどうすればいいんだあっ!」
「取りあえず席に着こうね。もう六時限目、始まっているよ」




