176 一部で保健室のベッドをそういう目的で使う描写があるのは事実w
しばしの間、唖然としていた校長先生と鵜鷺先生だが、すぐに我に返った。
「ねこや先生。ここにいるのが新田君と剣汰瓜さんだけだったからいいようなものの、生徒たちの前でキスするというのは……」
BLイラストには鷹揚な校長先生も人前のキスには厳しいか。しかも唇同士ですからね。R-1号のアレは一応「人工呼吸」みたいなもんだから。
「そうだよ。ねこや。生徒たちの前でいちゃつくのは、ほどほどにね」
鵜鷺先生も窘めるけど……
「大丈夫大丈夫。そう遠くないうちに、あたしとアールニゴウさん結婚するから」
復活したR-2号の腕に早くもぶら下がっているねこや先生。あんまり分かってないと見た。更に相手は「ケンタウリ星特産アンドロイド」なんですが。
◇◇◇
そんなこんなで今日も僕とエリスは保健室で母さん製作の弁当を食べることになった。
「オキムネッ! 何をしておるかっ! 『あーん』しろっ! 『あーん』」
はいはい。本当に皇帝陛下はワガママなんだから。はい。「あーん」
「うむ。お母上の作る弁当はなかなか美味いな。苦しゅうない。褒めてつかわす。それに比べて、オキムネ。おまえはホント気が利かんな。あたしから言われる前に『あーん』しろ。全く何年あたしの部下をやっているのだ。しっかりせい」
何年じゃなくて五日目の昼だけどね。
「で、オキムネ。ほれっ」
ん? 「ほれ」って何?
「かーっ」
エリス、ここでこれだからおまえはという顔。何なのよ。もう。
「ここは『皇帝陛下。わたくしめにも「あーん」してくださいませ。さすれば『金塊』を献上いたします』だろう」
ああー、そう来るわけ。ならばね。皇帝陛下に「あーん」してもらうなど、恐れ多くて出来ませぬ。辞退させていただきます。なので「金塊」は献上しかねます。
「ええいっ! この粗忽者があっ!」
エリス、僕の弁当箱から母さん特製のコロッケを箸で掴むと、僕の口に押し込んだ! んがぐぐ。
「よーし。食べたな。あたしの『あーん』食べたなー。よこせー。『金塊』よこせー」
やめいっ、保健室のベッドの上に押し倒すなっ! 早く弁当食べないと昼休みが終わるだろうがっ!
「そうねえ」
ため息交じりに淡々と言うねこや先生。
「一部の書籍や映像だとねえ。確かに保健室のベッドはそういう目的で使うという描写があることは事実ね。だけどね現実の保健室のベッドは疲れた人や病気の人が寝るためのものなの」
さっきそのベッドのところでR-2号とキスしていたねこや先生の説得力にも問題はあるが、エリス。ここは、ねこや先生の言うことが正しい。放せー。




