168 彼女を使って遠回しに俺にリア充自慢をしてくるw
ドサッ
後方でカバンを落とす音がした。振り向くまでもない。奴だって。このパターン、前もあったよね。高校入学五日目でパターンが読めるって、まずくない。
中高一貫の学校じゃないんだから、せめて高校入学一ヶ月くらいは新鮮な気持ちで生活したい……
「おおっ、サダヨシ。大儀である。近うよれ」
へ? エリス。サダヨシ呼ぶの? また、何か嫌な予感がするんだけど。
「なーにかな。僕はオキムネのことが妬ましくて妬ましくて妬ましくて妬ましくて妬ましくて妬ましくて妬ましくて妬ましくて、たまらないけど絵栗鼠ちゃんのお話なら聞くよ」
サダヨシ、あんまり文章がくどくなると読んでもらえなくなるから止めてくれ。
「やかましいわい。オキムネ。朝から彼女と手つなぎスキップしてくるような奴は全宇宙の非モテ男子の敵だ。全宇宙に賞金一億クレジットで手配書を回す。で、何かな? 絵栗鼠ちゃん」
「うむ。サダヨシ。これを見るのだーっ!」
ジャーン
黄門様の印籠のようにエリスが掲げたのはそりゃあ僕のアヘ顔写真じゃないかあ。
「!」
さすがのサダヨシも絶句。
「え、絵栗鼠ちゃん。これは一体?」
「うむ。サダヨシ。これはオキムネのアヘ顔だ。このあたし、地球ケンタウリ帝国皇帝エリス一世がオキムネをアヘ顔にしたのだっ! 更にこれだっ!」
バーン
次にエリスが印籠のごとく掲げたのは、さっきの僕がエリスに「あーん」されている写真だ。
「えっ、えーと」
すっかり毒気を抜かれたサダヨシ。
「で? 絵栗鼠ちゃん、これを俺にどうしろと」
「うむ。サダヨシ。このあたしがここまでしているのにだっ! オキムネはこのあたしに『金塊』を渡そうとせんのだっ! サダヨシッ! オキムネの親友のそちが何とかしろっ!」
「……」
二の句が告げられないサダヨシ。しかし……
「うっ、わーん」
泣きながら走り出した。何かこのパターンも前もあったような。
「オキムネがっ! オキムネがっ! 彼女を使って遠回しに俺にリア充自慢をしてくるうー」
こら待て、サダヨシ。えーいもう、どこから話していいものやら分からんが、とにかくそんな話じゃないぞ。
「まっ、待てえー。サダヨシー」
あれ、エリスがサダヨシを止めている。だけど、きっと僕とは別の目的で止めているんだよね。
「えーい。R-1号さーん」
どどどどど
わあっ、エリスの呼びかけで、凄まじい足音と共にR-1号が登場。あっという間に僕らを追い越し、サダヨシを追いかける。
これも何回目かも分からないが、もの凄く嫌な予感がするぞ。早く学校に行かなくては。




