166 乗りかかった舟というより寝ているうちに無理やり乗せられた舟ですw
いやー高校入学四日目も長かった。でも何とかようやく寝られそうだ。
明日の朝は起きてこないエリスを起こしてこいと母さんに言われて、「寝込みを襲った」と騒がれるか、エリスが母さんにけしかけられて僕を起こしにくるか。
どっちにしてもまた大騒ぎになりそうだけど、考えてもしょうがない。寝よう。
◇◇◇
ぶわちちち
僕は翌朝口から顔に広がる熱さで目を覚ました。
なになに? 何が起こった?
「あーああ、ああ、絵栗鼠ちゃん」
「朝の『あーん』するのに最初に味噌汁を近づけちゃダメだよー」
な? 味噌汁? うわっ、しょっぱ。
「オキムネッ!」
わあっ、何だ? エリス?
「皇帝たるこのあたしが『あーん』した味噌汁が飲めないとは何事だっ! 飲めーっ! 飲むんだーっ! オキムネーッ!」
今回も今回で、どこからツッコんでいいものやら見当もつかないが、寝ている相手に「あーん」する奴はおらんっ!
「オキムネがそう言っておるぞ。母上」
そんなエリスの言葉に母さん登場。
「オキムネッ!」
な、何よー? 母さん。
「元は言えば絵栗鼠ちゃんが『オキムネ、起きて』と耳元で言っても起きないあんたが悪い」
え? そうなの?
「それをやっても起きないもんだから、絵栗鼠ちゃんに『あーん』をしたらとあたしが言ったのだよ。まさか最初から味噌汁を飲まそうとするとは思わなかったけど」
母さん、それに脇にいる老谷のばあちゃん。あなたたちは数少ないこの作品の常識派ではなかったのですか?
「まあそうは言っても私も若い女の子の『あーん』見たいしねえ。可愛いじゃない?」
老谷のばあちゃん、エリスは普通の女の子じゃないんですよー。
◇◇◇
「まあとにかく乗りかかった舟だ。最後まで『あーん』で食べてやりな」
乗りかかった舟というより寝ているうちに無理やり乗せられた舟ですが、「あーん」くらいなら受けて立ちましょう。
「うんうん。やっぱり若い女の子の『あーん』はいいねえ。可愛い。ほっこりするわ」
「ほれっ! 何をしている? もっと上手に食べんかっ! 食べ方が下手だからこぼしているではないかっ! こらこら、もっと愛想よく、おいしそうに食べんかっ! このあたしの『あーん』だぞっ!」
老谷のばあちゃん、これのどこが「ほっこり」なんですかあ。
パシャパシャパシャパシャ
そして、当然のようにこの光景を連写するR-1号。もはやツッコむ気力もないわ。まだ朝だっていうのに。
◇◇◇
ふう。それでも何とか食べ終わったぞ。
「オキムネッ! 何をしておるかっ! 今度はあたしに『あーん』する番だろうがっ!」
はいはいそうでしたね。すみませんね気の利かない参謀総長で。




