162 「秘密基地」だっ! フンスw
老谷のじいちゃんを背負いながら、ケンタウリ人の配下が作ったという「秘密基地」の前に立つ。
つーかどこが入り口なのか分からんぞ。
「何をやっとる? オキムネ」
いや、入り口が分からんのよ。全体が「銀ピカの天体観測ドームもどき」だから。
「失礼なこと言うな。何が『銀ピカの天体観測ドームもどき』だ。『秘密基地』だっつーに」
もう「秘密基地」でいいけど、とにかく入り口はどこよ。
「仕方のない参謀総長だな。ここだ。ここ」
よく分かるなあ。言われてみると、この家が普通の家だった時の玄関と場所変わらないのね。
◇◇◇
しかし妙だぞ。さっきから「秘密基地」のドアの前に立っているのに一向に開かないぞ。おい、エリス。このドア開けるのに「パスワード」とか「顔認証」とか要るのか。
「アホか? オキムネ。ここで『開けゴマ』とか言うのか? 『童話』と『現実』をごちゃまぜにするんじゃないっ!」
うわ。散々、「二次元」と「現実」をごちゃまぜにしてきたエリスには言われたくないわ。まあそれはいいとして、どうやって開けるの? このドア。
「何をぬかす。扉はこう開けるもんだろう」
エリスはつかつかとドアに近づくと思い切りドアを横に引っ張った。
な? 手動? 引き戸? ここ「秘密基地」なんでしょ?
「『秘密基地』だっ! フンス」
またもない胸を張るエリス。そうか、これが「秘密基地」なのか。
◇◇◇
中に入ってみて、これまたびっくり。
懸念していた改造人間作成用の手術台がなかったのはよかった。それはよかったのだが、中は老谷のじいちゃん、ばあちゃんが暮らしていた時のものと何も変わってないじゃん。
いや待てよ。だまされるな。エリスとR-1号は「秘密基地」の「秘密」を予め隠すと言っていたぞ。念のため青い眼だけで見るようにしたが、何も変わらない。うむむ。
◇◇◇
しかし、悩んでいても始まらないので、中に入る。玄関入ってすぐの部屋は、R-1号とR-2号が寝る部屋だよね。今日はR-2号はいないけど。
「ソウダ。充電スル部屋ダ」
R-1号は本当に「充電」するんだよね。でも、老谷のじいちゃん、ばあちゃんは「充電」=「睡眠」くらいに捉えているだろうから、ここはスルー。
だけど何か引っかかるな。何だろう。うーんまあいいか。また後で考えるとして。
◇◇◇
え、玄関入って二つ目の部屋。エリスはここで寝るのな。
「場所確かめて、夜這いをかける気か?」
そんなことはせん。別の部屋で老谷のじいちゃん寝かせたら家帰って寝る。
「本当か? そういう言って油断させといて……」
しないしない。大体、母さんからもそこまですんなと止められているんだぞ。
「すると帰って、お母上を説得してから夜這い……」
しないっつうの。
◇◇◇
ええいっ! キリがない。ただでさえ高校入学四日目がなかなか終わらんのだ。これ以上尾を引いてどうする。
ほんでその隣の部屋はかつて老谷さん夫妻の寝室で、今は空き部屋だから、じいちゃん、その部屋で寝るかね?
「ま、待てオキムネ。その部屋は……」
バサッ
うわっ、部屋の引き戸を開けた僕の頭に何か降ってきたぞ。




