15 この作品はBLでもないのだw
僕はメタルヒーローを引っ張ると、それではみなさん失礼しますと言って立ち去ることにした。
一段と大きくなる女性陣のざわめき。
「まあ、あの高校生の男の子。見かけによらず強引ね。やるわね」
「お母さん。あれよ。あれこそがBLなの!」
「ビーエル? 『タチ』とか『ネコ』とかいうやつ?」
「お母さん。それは『百合』。これはBLだから『攻め』と『受け』なの」
「そうなの?」
「そうそう。あの場合、あの男子高校生が『攻め』で金髪碧眼のお兄さんが『受け』だね」
「ええっ、あの高校生の男の子。金髪のお兄さんよりだいぶ体が小さいけど、それでも『攻め』なの?」
「そこがBLの奥深いところよ」
「オキムネー」
物凄く嫌な予感がするけど一応聞くよ。何だ? メタルヒーロー。
「『セメ』と『ウケ』って何だ? ワタシハ『ウケ』ナノカ?」
それは知らなくてもお金稼ぎには殆ど関係のないことだよ。
「イヤ、知リタイ。馬鹿ニシテハイケナイゾ、オキムネ。オ金儲ケノ種ハドコニ転ガッテイルカ分カランゾッ!」
ある意味正論だが、さっきまで自販機の周りで小銭漁りをやっていた奴には言われたくないな。
まあ、確かにBLで稼げることもなくはない。しかし、それは達人の技術がいるのだ。
「ソウナノカッ?」
そうだ。それはメタルヒーローにも僕にも及びもつかない高等なテクニックなのだっ!
「分カッタッ! 分カッタゾっ! オキムネッ!」
分かってくれたかっ?
「アアッ、分カッタ。オ金儲ケノタメニ、真ッ赤ニ燃エル王者ノ印、BLノ星ヲ掴ムッ!」
キャーッ
周囲の女性陣にたちまち沸き起こる大歓声。
だから、何でそういうことだけ知ってるの? 何でそういう話になるの?
◇◇◇
もう周囲はキャーキャーキャーキャー大騒ぎ。これでは収拾がつかん。
僕は再度メタルヒーローの腕を引っ張る。
「何ヲスル。オキムネ。マダBLノ話ハ終ワッテナイゾ」
だからそれは上級者向けなの。もっと初心者でも稼げる方法教えるから、いったん帰ろう。
「ソウナノカ?」
そうそう、帰るぞ。
「あれ、行っちゃうの?」
「しーっ、お母さん。これから二人の世界に入るのよ」
「あらあらまあまあ」
「いったいどんなめくるめく世界が。うふふふ。次の新作の恰好の材料ね」
◇◇◇
「何カイロイロ言ワレテイルガ……」
あれは我々には及びもつかぬ上級者だ。あの域まで行くのは尋常ならぬ情熱がいる。すぐに出来る代物ではないっ!
この作品はR18ではないが、BLでもないのだ。
「ソウナノカ?」
そうなのだ。いったん。老谷さんの家に帰るぞ。メタルヒーローッ!
「何ヲ言ウカ。私ハメタルヒーロージャナイゾ。R-2号ダゾ」
何? R-2号なのか? では、Rー1号はどうした?
「別ノ方法デオ金稼ギヲシテルゾ」
な・ん・だ・と?




