144 すりすり 久々のラブコメモードかな すりすり
「心……いや、やはりここは魂と言うべきじゃな。それを持った若き、強きイケメン冒険者はラップランドにはこのわししかおらんかった」
キャッキャッ べたべたべた
「そう。氷の洞窟に封印されたゴーレムを手に入れるには穏やかな顔と荒ぶる顔を持つ太陽の女神ソロマニの加護がどうしても必要なのじゃ。しかし、太陽の女神ソロマニは魂を持つ若き、強きイケメン冒険者しか加護を与えることはない」
キャッキャッ べたべたべた
女生徒のみなさまがキャッキャ言いながらR-2号の筋肉にべたべた触っておられまして。そのR-2号の左肩の上で目を閉じて、腕組みをした三太さんが誰も聞いていない厨二を語る。
この学校に入ってからもう何度このセリフを口にしたか分からないけど、言います。
シュールだ。
◇◇◇
しかし、僕にはそんなことばかりを思っていられないのであった。はい、それは後方の保健室の窓からハンカチをくわえながらながら般若の表情で鋭い視線を浴びせてくるねこや先生の存在からです。
三太さ~ん。厨二もいいですが、そろそろ校務員業務の引継を再開してもらえませんか。
「うむ。少年。わしの話の続きを聞きたいか。はっはっは。しょうがないな。聞かせてあげよう。太陽の女神ソロマニもやはり女性でな。初めは若き日のわしのイケメンぶりに目を奪われたそうじゃよ。しかもそんなイケメンなわしが魂をも併せ持つことに気づいたソロマニからのアプローチはもう熱烈で……」
あかん。これはあかん。
◇◇◇
次の一手は三太さんより更に見込みがないが、エリス、さっきからねこや先生がお怒りだ。R-2号に三太さんへ校務員業務の引継を再開するよう言わせてくれ。
「ふむふむ。にゃんこ先生が怒っているのか。すりすり」
そうなんだよ。僕とエリスは、ねこや先生から赤フン一丁の金髪碧眼筋肉質美青年のR-2号に女生徒のみなさんが群がらないように言われているじゃないか。それが出来てないから怒っているんだよ。
「そうかそうか。それでにゃんこ先生は怒っているのか。すりすり。しかし、オキムネ。あたしも怒っているぞ」
え? 何で?
「このあたしがずっとすりすりしているのにオキムネは一向に『金塊』を寄越さんではないか。すりすり」
それは鵜鷺先生が高校一年生だからまだ結婚できないとか、母さんが婚約はいいけど、そっちはダメとか言ったでしょ。
「そっちって何だ? すりすり」
言わせるな。恥ずかしい。もういいっ! かくなる上は最後の手段だ。
「どこへ行くのだ? オキムネ。すりすり」
どこに行くったって、どこ行ってもついてくるんだろう?
「当然だ。『金塊』をくれるまではついていくぞ。すりすり」
かくて僕はエリスに背中をすりすりされたまま校舎内に戻る。もちろん「このリア充め」という視線を浴びながらだけど。はあ。




