143 三太さん異世界冒険者だった頃の思い出を語る(厨二)w
ゴーゴゴゴーゴー
はい、またこのパターンですね。R-2号が口から火を吹き、焼却炉全体が燃えています。
さすがの三太さんも呆気にとられているし、本来の主君であるエリスは飽きもせず、僕の背中へのすりすりしてるし、ここはやはり僕が言うしかないか。
R-2号、火力を下げろ。
「何故ダ?」
あの「焼却炉」という鉄製の筒は入れ物であって燃やす対象ではない。他にも燃やしていいものと悪いものがあるからちゃんと三太さんに聞いとけ。
「ソウナノカ? 三太」
「うっ、うむ」
話を振られ、我に返る三太さん。
「燃えるゴミと燃えないゴミがあってな。燃えるゴミしか燃やしてはならんのじゃ」
「アノ鉄ノ筒ダッテ燃エルゾ」
そんなこと出来るのはR-2号だけだって。溶鉱炉かっつーの。本当に常識ってもんが全然ないのにそれ以外のもんは信じられないほどハイスペックなんだから。
◇◇◇
ざわっ
三太さん同様、しばらくの間、呆気にとられていた女生徒のみなさま、この辺で続々と我に返りだしました。
「え? え? え?」
「今の何? 今の何?」
「火を吹いたわ。火を吹いたわ」
「ゴジラなの? ゴジラなの?」
「ゴミが燃えたってことは本当の火なのよねえ」
これもパターン。さて「奇術」だと言いに行こうとすると何故か三太さんが僕を制して前に出た。へ?
「あいや待たれい皆の衆」
大見得を切る三太さん。
「ゴーレムッ! わしを左肩に乗せろっ! ゆっくりとだぞ。ゆっくりと」
「分カッタ」
R-2号の左肩の上に戻った三太さん。目を閉じ、腕組みをしたまま、ふんぞり返ると語り出す。
「そう、あれはわしが訪れたいくつ目の異世界じゃったろう。六つ目か七つ目か。あまりたくさん行ったので覚えてはいないが、その異世界はラップランドという名前じゃった」
わっ、厨二が始まった。
「わしはラップランドを常に一人で冒険しとった。なに、若く強くイケメンであったわしとパーティーを組みたいという女魔法使い、聖女、弓使いの女エルフはたくさんいたが、わしはその全てを拒んで一人で冒険しとった。ふっ、若かったんじゃな」
あのー、三太さん。十秒で嘘とばれる昔語りに女生徒のみなさま退屈しだしています。ほら、あの方など女子高生とは思えぬ、握りこぶしが口に入るんじゃないかと思われるほど大きな口を開けて、大あくびをされておられます。
「その時じゃ、わしがゴーレムと出会ったのは。ゴーレムは悪神の手により氷の洞窟に封印されておった。多くのパーティーがゴーレムを手に入れんと氷の洞窟に挑んだ。しかし、誰一人帰ってはこなかった。奴らには力はあっても心がなかったんじゃ」
ついに女生徒のみなさまは三太さんを無視して、R-2号に触りだしましたぞ。




