134 男にはたとえ腰が痛くなると分かっていても戦わなければならない時があるのだw
待つことしばし。保健室内のカーテンが開き、姿を現したのは160cmくらいの小柄ながら筋肉質の三太さんが登場。その後ろには見たところ190cmはありそうな金髪碧眼のやはり筋肉男R-2号。二人とも見事に赤フン着用。フンドシと言えば、大相撲中継でぐらいでしか見たことなかったけど、それとも違うのね。
「少年。これは『六尺フンドシ』というのだ。覚えておけ」
いえ、三太さん。格好つけられるのはいいんですが、腰は大丈夫なんですか?
「少年よ。覚えておけ。男にはたとえ腰が痛くなると分かっていても戦わなければならない時があるのだよ」
いえ、いいんですけどね。後で腰が痛いーとか言わないでくださいね。
◇◇◇
「キャー。やっぱ素敵だわー」
やっぱりR-2号に飛びつくねこや先生。
それを見て「フッ」とニヒルに笑う三太さん。うーん、やっぱり厨二だ。
「ねこや先生。いいところ悪いが、あんたの彼氏、ちょっとオイラに貸しちゃあくれねえかい?」
「うーん」
R-2号に抱き着いたまま、小首を傾げるねこや先生。
「他の人だと『イヤッ』と言いたいところだけど、他ならぬ彼ピに赤フンの素晴らしさを教えてくれた三太さん。ここは涙を飲んでお貸ししましょう」
ちょっとの間、離れることが涙を飲むほどのことなんですか?
「うむっ! さすがはねこや先生。アールニゴウの彼女。よーしっ! アールニゴウッ! これから校務員の魂を徹底的に引き継いでやっからなっ!」
そうだっ! 思い出したっ! もともとこの保健室に集まっているのは校務員の仕事を三太さんからR-2号に引き継ぐためだったっ! やっと本来の目的に帰ってきたのね。もう昼休み終わりかけているけど。
「それでは行くぞっ! アールニゴウッ! 校務員の仕事で一番大事な魂の引継を行うっ! では最初に河居子鰤子様の『君は素敵な赤フンボーイ』の振り付けを覚えることからじゃっ! ミュージックスタートッ!」
♪じゃーんじゃじゃじゃーん じゃじゃじゃじゃーん じゃじゃじゃじゃーんじゃんじゃん
まあ予感はありましたが、やっぱりこうなりましたか。R-2号が三太さんの振り付けを忠実に再現しているのと、ねこや先生が赤フン姿のR-2号をうっとりした目で見つめているのはよしとしましょう。三太さんの腰は心配ではありますが。
しかし、校長先生。うちの学校の校務員業務の引継が昭和アイドルの振り付けでいいんですか? 普通、校舎の管理とか修繕とかから始まるんじゃあ?
「ん? 何か言った? 新田君?」
あーあ、校長先生。夢中になってR-2号見て、スケッチブックにドローイングしているし。鵜鷺先生はそれを後ろから凝視してるし。
「オキムネー。お母上に作ってもらった弁当空になったぞー」
そうだねエリス。そろそろ昼休みも終わるしね。