131 エンジェルは二次元にしかおらんのだw
「オキムネッ!」
目を閉じて、腕を組み、感慨にふける三太さんだが、もちろんそれに気を使うエリスではない。
「早く食わんと昼休みが終わってしまうぞ。ほれっ、さっさと『あーん』しろ。『あーん』を」
むうっ、何だか三太さんに悪いような気もするが、昨日もこのパターンで昼休みに食事を摂りそこねて、午後の休み時間にエリスと食べて、さんざんサダヨシたちに冷やかされたからな。同じ轍を踏むわけにはいかん。
「あ、そう言えば、私も食べなきゃね」
これは鵜鷺先生。校長先生や養護のねこや先生はまだ自由がきくけど、普通の教科の先生である鵜鷺先生は昼休みに昼食を済ませないと。
「ほれっ、オキムネッ! 『あーん』。食べたら『美味しい』と言わんか。そうかそうか。『美味しい』か。そしたら、今度はあたしに『あーん』しろ。うん。『美味しい』」
呆然として見ている三太さん。いや、何だかすみません。
◇◇◇
「コホン」
おっ、三太さんが咳払いをした。
「お食事を摂りながらでいいので、さっきの続きを話させていただきます」
おおっ、メンタル強。さすがはこの学校の校務員!
「老谷。それは最高の友だった。豊富なオタク知識、半端ではない厨二ぶり。まさに『強敵』と書いて『とも』だった」
「そう。老谷は最高の『強敵』だった。あのことさえなければ」
「オキムネ。このシーンさっきも見たぞ。早送りボタンどこだ?」
エリスー。そう言わずに聞いてやれよ。盛り上げるには前段が必要なんだよ。
◇◇◇
「老谷はーっ、老谷はーっ、わしの大事なものを踏みにじりおったのだーっ!」
むうっ、盛り上がってきたーっ! 恐らく自分で作ってきたと思われる小さなお弁当を食べ終わった鵜鷺先生は右手に箸を握りしめ、右のほっぺたにごはん粒を一つつけたまま見守っている。校長先生もスケッチブックを閉じた。ねこや先生も注目している。R-2号に引っ付いたままではあるが。
「あいつはっ! あいつはっ! 老谷はっ!」
ゴクリ
「マイ・スウィート・エンジェル河居子鰤子ちゃんのことをなーっ! 『ぶりっこぶりぶり3ぶりぶりー、合わせてぶりぶり6ぶりぶりー』と言いくさりやがったんだーっ!」
はあ?
「だからわしは老谷に言ってやった。貴様、好きなアイドルの名前を言えっ! そいつを思いっきりけなしてやると。そうしたら、老谷はっ!」
えっ、えーと。
「仁王立ちしてドヤ顔でこう言いやがった。『三次元の女をエンジェル呼ばわりとは笑止千万。エンジェルは二次元にしかおらんのだ』と」
うんまあ、老谷のじいちゃんならそれくらい言うかもね。