130 今いいとこなんだから、そういうツッコミはいらないw
「うむっ、よくぞ聞いた。サンタクロースのじーちゃん」
すっかりドヤ顔で相も変わらずない胸を張るエリス。もちろん三太さんの目つきが急に厳しくなったことなど全く気にもとめていない。
「我が地球ケンタウリ帝国の輝かしい歴史の第一歩が老谷のじいちゃんちの占領なのだっ!」
ガクッ
何とか四つんばいで腰をなでていた三太さんだが、ついに力尽きたか腹ばいになった。
「あ、大丈夫ですか?」
さすがに養護教諭のねこや先生が駆け寄る。
「い、いや。大丈夫。ふっ、世界は広い。凄い厨二がいる。老谷の奴め。いつの間にこんな凄い弟子を育て上げていた?」
「ええーいっ、だから、あたしは老谷のじいちゃんの弟子ではないっつーの。皇帝のあたしが老谷のじいちゃんの家を占領して、地球に関する一級資料を接収したのだっ!」
「???」
はい。これはもう収拾がつかないですね、ここはもう僕が出るしかないですね。あのー、三太さん、老谷のじいちゃんとはどういう関係で?
◇◇◇
途端にシリアスで劇画チックな顔になる三太さん。
「そこな少年よ。よくぞよくぞ聞いてくれたって、いで、いで、いでででで」
「ほらもう」
再度、三太さんに駆け寄るねこや先生。手際よくその腰に湿布を貼り付ける。うーむ、普段おちゃらけてばかりだけど、やっぱり養護の先生なんですね。
「もうっ! 三太さんには私の大事なアールニゴウさんに仕事を教えてもらわなきゃなんないんですからね。本気で腰ぶっこわされて、入院でもされたら面倒くさくて仕方がないです」
あーやっぱしそういうことですか。
◇◇◇
「では仕切り直して。そこな少年よ。よくぞよくぞ聞いてくれた」
湿布貼ったら腰痛がいくらか収まったのか椅子に座った三太さん。様式美にこだわるんですね。もっとも僕の周りにはエリスを筆頭にそういう人間ばっかりですが。
「老谷。それは最高の友だった。豊富なオタク知識、半端ではない厨二ぶり。まさに『強敵』と書いて『とも』だった」
目を閉じ、感慨深げに語る三太さん。え? そんな昔から「オタク」とか「厨二」とかあったんですか?
「少年っ!」
はっ、はいっ。
「今いいとこなんだから、そういうツッコミはいらない」
は、そうなんですか。
「そう。老谷は最高の『強敵』だった。あのことさえなければ」
何だかシリアスになってきたのかな?
「そう、あいつは、老谷は許し難いことをやったのだっ! このわしにとってとても許し難いことを」
あ、ここで次回に続くのですね。