126 前任の校務員さんはこの学校を象徴する魂の塊w
トントン
あ、また、ノックの音が。ガラッと開けて入ってきたのは校長先生。ねこや先生がR-2号にぴったりくっついていても、エリスが僕にぴったりくっついていても、一向に動揺されないのはさすがと言っていいのでしょうか?
ごそごそとカバンから何やら取り出す校長先生。
「しかし驚いたね。鵜鷺先生も驚いていたけど。アールニゴウさんは、お父さんはヨーロッパ人でお母さんが日本人。それで日本国籍選択したんだね。これなら問題ないわ」
うーむ。R-1号の奴、随分精巧な戸籍謄本でっちあげたんだな。喜んでばかりもいられない話だけど。
「待てっ! こちょこちょ先生っ! R-2号はケンタウリ星の最新鋭のアンドロイドって、オキムネ止めないのか? いつもみたいに口を塞がないのか?」
ああうん。校長先生、ねこや先生。これはいつものエリスの厨二ですから。
「分かっているよ。でもね、これからアールニゴウさんに辞令交付するから、ちょっと静かにしてもらえるかな?」
イエッサー、校長先生。
「モゴモゴモゴ」
「辞令。アールニゴウ。……四月十二日をもって、……高等学校校務員を命ずる……」
「キャーッ」
辞令書を受け取ったR-2号に飛びつくねこや先生。
「これでずっと一緒だね」
いえ、単に同じ職場になっただけだと思うのですが……とは言えない僕だった。
◇◇◇
ところで僕とエリスの担任の鵜鷺先生は保健室には来ないんですか・
「鵜鷺先生は今校務員の前任の三太さんを呼びに行っているのよ。今日中に引継してくれるというお話で」
トントン
あ、また、ノックの音が。
入ってきたのは鵜鷺先生。でも、心なしか表情が疲れているような。
「校長先生。三太さんなんですが、この学校の校務員に必要な魂の塊を何としても伝授したいそうで、それが場合によっては、何日もかかるそうです」
「うーん」
腕組みをして目を閉じる校長先生。
「三太さんもこの学校を象徴するような魂の塊な人だからねえ」
何ですか、それ? もの凄く嫌な予感がするんですけど
◇◇◇
♪じゃーんじゃじゃじゃーん じゃじゃじゃじゃーん じゃじゃじゃじゃーんじゃんじゃん
分かる。分かるぞ。今年、高校一年の僕にも分かる。これは伝説の昭和のアイドル。未だにコンサートで熱狂的なファンの六十代の男性が「鰤子―っ! エル・オー・ブイ・イー ラブリー鰤子―っ!」と声を張り上げる、河居子鰤子さんの曲のイントロだ。




